第130話 二国間

 セラは自分の知るイリオスとワノモトとの関係を話す。


「まず、2人がワノモトからイリオスに来てしまったのは偶然じゃない、故意にこちら側が干渉しあなた達をイリオスに呼び寄せた。」

「そんなことが可能なのか?イリオスとワノモトがどれだけ離れてる位置関係なのか、そもそも同じ星の世界なのかも俺は知らない。イリオスの人たちはそこまで知ってるのか?」

「ごめんなさい、私もそこまでは分からないの。ただ、イリオスで魔術が生み出されてから初めはモンスターを倒すための手段としてしか使われていなかったけど、違う使い方を模索する人も増えた。その一つが、レア家が辿り着いた異動魔術イドウマジュツ。」

異動魔術イドウマジュツ、それがうちらをここに呼び寄せた力ですね?」


 セラはゆっくりと頷き、さらに話進める。


「ただ、この異動魔術イドウマジュツを使いこなすのに、長い年月と犠牲者を生み出したとも聞いてる。その為、王族の間でも簡単に口にできる言葉ではなかった。」

「犠牲者……もしかして、俺たちワノモトに送るための実験された人たちが、行方をくらましたとかか?」

「……ええ、その通りよ。私たちが使う異動魔術イドウマジュツは、片道切符なの。これまでも何人の人が実験され、1人もイリオスで発見はできなかった。」

「では、なんでうちと兄さんはここにいられるんですか?片道切符なら、ワノモトからイリオスに送る方法はまだ確立されていないはず。」


 アンジェの疑問は正しい。


 イリオスからワノモトへの干渉はできても、逆はできない、それをする人がいないのだから。


 しかし、現にリンとアンジェはイリオスにいる。


「本当にごめんなさい、私が関わっておきながら知らないことばかりで。2人には、なんでお詫びをすればいいか。」

「お詫びなんていらないですよ、ね、兄さん!」

「ああ、俺たちは今生きてる、そしてセラ、オウロ、カグヤ、レム、ルビア、マクセル、たくさんの人と出会えていろんな経験ができてる。セラが謝る必要なんてない、まあ、真実を知りたいのは事実だけど。」

「2人とも……ありがとう。」


 涙ぐんだセラの声は2人により止まり、再び話し始める。


「ここからは、私の推測になるのだけど聞いてほしいの。私の力、ギガスの呪いはこの異動魔術イドウマジュツに大きく影響を及ばすと考えてる。例えば、

「目印?セラの呪いがそんなふうに使われるのか?イリオスではセラしか持ってない力だよな、流石に考え過ぎじゃ。」

「リン、あなたはイリオス目覚めた時のことを覚えてる?そこに、誰がいたか。」

「え、俺は、確か。」


 リンは過去の記憶を遡り、目を覚ました時のことを思い出す。


「たしか、砂漠みたいに乾いた土地に倒れてた、気がする。そこで、誰かに見つけられてそのまま村に運ばれて……待ってくれ、あの時俺を助けたのは!」


 リンは今まで記憶を遡ることがなかった。

 理由は簡単、記憶を失ったことにより、その必要があると考えなかったのだ。


 ただ、セラの言葉により自分を助けてくれた人間が思い出される。


「あの時、俺を助けてくれたのは、セラ、お前だよな。」

「……ええ、そうよ。」

「え!?兄さんとセラさんはもっと前から会ってたのですか!?」

「そう、私の目の前に眩い光と共に落ちてきたのは、リン、あなただった。私は混乱して、あなたをどうすればいいか分からなかった、でも、死なせてはいけないと思った。だから、ペレの村にまで運んだの。」

「てことは、セラは気付いてたんだな。アテネで会った時から、俺が何者なのかって。」

「ごめんなさい、その通りなの。それでも、私はあなたを呼び出した責任から逃げて、見てみないふりをした。」


 リンの中で点と点が線でつながっていく。


 なぜアテネでセラと出会ったとき、必要以上に関わってきたのか、なぜ毎週会う約束をしたのか、なぜアンジェの情報をリンに伝えたのか。


「そうか、セラは俺を導いてくれてたんだな、生きる理由と大切な妹を取り戻すために。」

「そんな大層なことではないわ、アンジェはリンが落ちたきた次の日に、ペレの村の近くで同じく現れた。私が向かった時は、既に近くを通った商人がアンジェのことを助けてくれて、そのままパトラに向かった。」

「だからうちは、パトラで目覚めたんですね。それじゃあ、兄さんが記憶を無くしてる理由も分かるんじゃないですか!?」


 アンジェの問いに、セラは頭を横に振る。


「ごめんなさい、それだけは本当にわからないの。なぜリンは記憶を無くして、アンジェには問題がないのか。」

「そうですか。……うちら以外に、イリオスに呼び出された人たちっていないんでしょうか?ピンポイントでうちと兄さん、ウラノス家の人間だけが呼び出されるとは考えづらいような。」

「私もそう考えているの、2人の光以外確認はできていないけど、このイリオスにはワノモトからの人がいるのではないかと。もしかしたら、わたしがギガスの呪いを受け継ぐ前に。」

「だとしたら、この世界にいる異世界人は俺とアンジェだけじゃない?……ははっ、頭がムリッて否定したくなるくらいの情報量だな。」


 セラはリンとアンジェに真実を伝えた。


 はたして、これからリンとアンジェが選ぶ道とは。

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