第122話 第8のカケラ
続けてセラは、ロペス・ウォーカーについて話し始めた。
ロペスは、ウォーカー家の長男で、王都アテネの王子。
そして、セラの姉であるステラの婚約者。
つまり、このままいけばロペスが王となり、ステラが王妃となる。
今はレア家が継いでいる王国の歴史を、ウォーカー家に任せることになる。
そこには大きな意味があった。
「ロペスの生まれたウォーカー家は、サニー家と共にこのイリオスに魔術をもたらした家系の一つなの。」
「サニー家!?それって、ルビアの家だぞ!」
「え、ルビアはサニー家の人なの?……だとしたら、彼女も知っているかもしれない、ウォーカー家の偉大さを。」
「そんなに魔術を生み出したことはすごいことなんですか?確か、この世界の2%の人しか使えないとは聞いてますが。」
「そうね、モンスターと人が常に争うこの世界で、初めて人が優位に立てたのは魔術のおかげなの。」
魔術は、セラの操る
それほど、モンスターに魔術耐性を持つ個体がいないのだ。
魔術が生まれる前は、皆武器を手に取り、命を奪い奪われる環境で人が暮らす世界を守ってきた。
だが、そこに魔術が誕生したことでモンスターを圧倒することができ、スタンピードが発生した際も被害が少なくなった。
その魔術の開発に、ウォーカー家は関わっており、その子孫がロペスになる。
ではなぜ、セラに固執するのか。
「姉様は、ステラ姉様は男の人が苦手なの。本人は克服しようとしてるんだけど、小さい頃に出先で襲ってきた大きな盗賊団に誘拐されたの。そのトラウマがあって、男の人に触れることができない。」
「つまりなんだ、セラは姉に触れられない憂さ晴らしにロペスって奴に利用されてるってのか?そんなのおかしいだろ、てか、ギガスの呪いもあるんだから触れられないだろ?」
「ええ、でもこの力をロペスは知らない。ギガスの呪いは、レア家の中でしか明かされてないの、もちろん引き継ぎの儀式も知らないから、まだ母様が抱えてると思ってるわ。」
「……明かせない理由があるんですね、であればそこは聞きません。でも、それじゃあセラさんが救われない、何か方法を考えないと。」
そこで、リンが提案する。
「なあ、ギガスの呪いがなくなったら外敵から襲われるって話だったよな?」
「ええ、少なくとも私たちはそう聞いてる。だから、ここまで受け継いできた。」
「その発信元は分からないんだよな?だとしたら、もっと別の理由でギガスの呪いを消したくない理由があるとは思えないか?」
「それって、敢えて誰でも不安になることを伝承して、この力を残させてるってこと?」
「可能性の一部だけどな、でもあり得る話だと思う。過去の資料を遡って見ても分からないなら、できる限りの対策をしてからその呪いを解き放つのも手な気がする。」
リンの意見にセラも考える。
「まあ、リンのいうことも分かるわ。だとしたら、まずはアテネを救い出して、来る日の準備をする必要があるわね。」
「そうですね、まずはシオンに向かってアテネの様子を見ましょう。ロペスが首謀者なら、カラマタやシオンに刺客を寄越すかもしれません。」
「そうだな、騎士団が留守を狙った犯行、そこに身喰らう旅団も絡んでいたら相当に厄介だ。まったく、いろんなことが重なりすぎだろ、セラも大変だよな─。」
一緒に歩いていた3人だが、突然リンは頭を押さえ、その場にしゃがみ込む。
「兄さん!」
「リン!……まさか、この雰囲気は。」
「ああ、また頭に何か流れ込んできてる、何か思い出せそうだ。悪い、2人とも、俺を─。」
「言われなくても、何人たりともあなたに指一本触れさせないわ。」
「はい!兄さんのことはうちらが必ず守ります、なので安心して戦ってきてください!」
「あ、ああ、ありがとう、セラ、アンジェ。」
リンはその場にしゃがんだまま目を瞑り、目の前が真っ暗になる。
次目を開けたリンに映ったものは、
「……やっぱり、またお前と出会うんだな、黒い俺。」
「おおっ、やっと感情が動いて俺のところに来たか、レプリカ!今お前の中に生まれた感情、なんて言うか教えてやろうか?」
「言われなくてもなんとなく予想できてる、俺はセラの話を聞いて、セラに纏わりつくロペスに対して体が何かに抵抗するような嫌な感情を思い出した。」
「そうだ、よくわかってるじゃねえか。それが、お前の中に新しく生まれた感情、恨みだ。さあ、ここから先は説明しなくても分かるな、レプリカ!」
黒いリンは、白剣を構えてリンに襲いかかる。
リンの手元にも、黒剣が現れる。
「ああ、ここで俺は死んでいられない。生きるために、みんなと共に歩いていくために、俺はお前を超える。これは、俺にとっての試練だろ!」
「そうだ!俺を倒さなきゃお前は死ぬ、俺を楽しませるために必死についてこいよ、レプリカ!その命、いつでも俺は狙ってるからな!」
再び、リンと黒いリンの戦いが始まった。
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