第94話 裏の世界

 1人の男の声が、奴隷売買の会場をざわつかせた。

 手を挙げた男は、全身金色のシルクで作られた服に、首から指まで数多くのアクセサリーを身につけている。

 ぽっちゃり体型であり、鼻息の荒さも特徴と言えた。


「おっ、おお!!今回最高額の、金貨100枚が出ました!さあさあ、この奴隷に価値を感じさらに上をいくものはいらっしゃいませんか!!」

「う、さすがに、100枚は。」


 あたりの観衆が勢いに呑まれている中、


「そうだ、金貨300枚までなら俺っちは即決でそれを買う、誰かいるかえ?」

「さ、さ、300枚!?」


 金貨300枚もあれば、カラマタなどの中型規模の町で一生暮らせるほどの価値である。


 それを、金色の男はこの一瞬で払おうとしていた。


「さあ!もういらっしゃいませんね!では、100枚にてこの奴隷はお買い上げ!おめでとう御座います!」


 金色の男はどっしりと歩き、少女に付けられた鎖を掴み、


「さあ、これから楽しい毎日を過ごさせてもらうえ、期待してるえ。」

「……。」


 少女は何も反応せずに連れられていく。



「それでは、今回のオークションはこれまでになります!次回の開催も、この鐘が合図!皆様、お忘れなきを!」


 オークションという名の、奴隷売買が終わり集まっていた人々は散っていく。



 リン、セラ、オウロはこれからの行動を話し合っていた。


「今調べるべきことを話すわよ。1つ目に、彼女の正体。2つ目、奴隷売買の経歴と、対象となる人。最後は、身喰らう旅団が関与しているか。この3つをまずは調べましょう。」

「分かりました、この町で顔を知られていない僕とリン君なら、どれでも対応できると思います。」

「では、私が奴隷売買の経歴を調べるわ。」

「俺は、彼女のことを調べたい、尾行しようと思う。」

「それじゃあ、僕は身喰らう旅団について調べてみるよ。あまり離れ続けるのも良くない、1時間後に町の入り口で集まろう。」


 リンとセラは頷き、各々の行動を開始する。



 まずはセラ。


 奴隷売買がいつから始まり、商品とされる奴隷たちはどこから連れて来られるのか調べるべく、オークション会場に先ほどまでいた高齢の男性を追いかけ、


「あなた、ちょっとよろしいかしら?」

「ん?なんだい、珍しいな、こんな別嬪さんがラミアにいるなんて。」

「実は、お金がなくて毎日いろんな場所を旅しては……どうにか生きているの。」


 いつものセラからは感じられない、弱々しい言葉とあざとさすら感じる仕草で話す。


「ほぅ、それはどんなことをしてでも生きる為に何かしたいということかい?」

「……その先を言わせるのは、紳士として、いかがなのですか?」

「ふっ、いいだろう、こちらに来い。」


 セラは高齢の男性の後をついて行き、辺りを見渡す。


 そこは、レンガで作られた大きな建物が並んでおり、家にさえ宝石があしらわれている。


(ここまでのお金がなぜラミアにあるの?アテネ以上に予算がある町を私は知らない、やっぱり裏で何か起きてる?)

「ここだよ、お嬢ちゃん。」

「あ、ありがとうございます。」


 セラが通された部屋は、高齢の男性の家であり、さらに中には若い男が3人いた。


「あれ、爺さん、今日は随分極上の女だな!」

「滅多にお目にかかれないじゃろう、最初はわしが頂くから後は好きにせえ。」

「やったぜ!俺はこいつと─。」


 男が話し終える前に、セラは高齢の男性の目の前から消え、3人の男に接近。


 1人の男に顎に拳を入れ宙に浮かせ、2人目は腹に掌底突きを入れ窓を突き破る。

 最後の男は、回し蹴りで壁にめり込み即座に戦闘不能にさせた。


 その動きは1秒にも満たない。


「へっ─。」

「ごめんなさい、お爺さん。私が生きる為にしたいことは、この世界が腐っていないことを証明することなの。だから、これはもらっていくわよ。」


 セラの手には、男たちが読んでいた奴隷について書かれている報告書。


「貴様、騎士団か─。」

「いいえ、今の私は騎士団ではないわ。仲間と共に旅する、1人の戦士よ、少しお休みなさい、お身体を大切に。」


 セラは首をチョップし、高齢の男性もダウンさせる。



 場が静寂に包まれ、セラは手にした資料を読む。


「奴隷、種類は問わず。但し、秀でた力を持つ者、名家の者、容姿の良い者、対価ははずむ。この履歴は、10年近く前から綴られているわね。……10年前、……無関係、かしら?」


 セラは資料をしまい、外に出る。


「さて、まだ時間はあるし問題が起きてなければいいけど、リンのところに向かおうかしら。……まさか、ここでレムに色仕掛けの作戦を教わってたのが役に立つとわね。でも、レムは私に対して、出てて欲しいところは出てないって言ったこと、まだ許せないけど。」



 その頃、シオンで料理を試作していたレムは、


「はくしゅん。」

「大丈夫かい?レム?」

「はい、カグヤさん。なんだか、胸の辺りを冷気が通った気がしたんですけど、多分気のせいです!」



 セラは情報を手にし、リンと合流しに向かうのであった。




 そして、所変わり次はオウロの作戦に移る。

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