第267話 城へ
リンとセラが先に進むと、後方から、
「兄さん!セラさん!」
「アンジェ、オウロ、無事だったか?」
「ああ、何とかね。ただ、予想以上にアテネは崩壊している。この分じゃ、王族の人達も……。」
「今は目の前の助けられる命を救うんだ。ブラッドの蒼き世界を作るために皆の命を奪わせてたまるか。」
辺りにオオカミ型の存在はなく、人々の姿もない。
「こんな城近くに誰もいないなんて、あいつの仕業だよな。」
「その可能性が高いですね、犠牲になった方の為にも戦わなくては。」
城近くはオオカミ型がいないこともあり、気を緩ませることはできないが、落ち着いてやっと呼吸ができた。
道中のオオカミ型はアンジェとオウロが対処していたが、
「俺とセラが先行して、後を追いかけてきてくれてたよな?オオカミ型を全て行動不能にさせたのか?」
「いや、全てではないよ。別れたタイミングは、全員倒さなくちゃいけない雰囲気ではあったんだけどね。」
「何かあったのか?」
「はい、兄さん達が奥で多くのオオカミ型を倒してる中で、どこかのタイミングで急に撤退を始めたんです。多分、ボスのような個体を倒したのではないですか?」
「……ボス、というより、セラの姉さんが現れたんだ、炎オオカミの姿で。もしかしたら、その時の可能性が高いな、精神的に俺たちを追い詰めるっていう役割を終わらせたから、無駄に兵を失わない為に撤退させたか。」
リン達とアンジェ達は数十メートルしか離れていなかった。
そして、何かがきっかけでオオカミ型が撤退したとすれば、タイミングはセラの姉、ステラが絶命した時だろうと予想ができた。
「セラさん、そんなことが。」
「ええ、でも姉さんから大きな情報も得られたわ、ブラッドと私の父、ベガが密会をしていたらしいの。お父様は気が付いてないみたいだけど、姉さんには利用されてるように見えたらしいわ。」
「ということは、ブラッドはベガ国王を蒼き世界に連れて行く候補に上げてない、ということですね。」
「その真実を知る為にも、俺たちはいかないといけない。もうすぐ城だ、みんな警戒を。」
リンを先頭に、アテネの城まで辿り着いた。
入り口は破壊されており、どこから入るか探し始めた。
「セラ、入れそうなところ分かるか?」
「そうね、私の部屋につながる隠し通路なら使えるかも。この前使った道じゃない方に、もう1箇所あるの。」
「案内頼むな、セラ。」
セラに案内されてリン達は城につながる通路に辿り着いた。
「ここから入りましょう、ブラッドがいつ襲ってきてもおかしくないわ、みんな気をつけて。」
「了解。」
セラが先頭で中に入り、最初に出た部屋は、
「ここがセラの部屋なのか?」
「いえ、その中間にある貯蔵庫よ。大したものはないと思うけど。」
4人は貯蔵庫に入り、周りを見渡す。
「……セレジア様、ここは元から貯蔵庫でしたか?」
「私の記憶ではそうだけど、オウロ何か思い当たる節があるの?」
「はい、僕が古代騎士団にいた頃、ここに確かアテネの歴史を記した岩文字があった気がするんです。」
岩文字とは、石の壁などに文字を刻み何百年も記録に残す方法であり、イリオスでは何箇所か存在する。
「岩文字、見た感じどこにもなさそうだけどな。」
「……兄さん、この壁にかけられた絵画、位置に違和感ありませんか?」
「言われてみればそうだな。」
アンジェが見つけた絵画は、壁にかけられているが壁に対して右寄りに飾られており、アンバランスさがアンジェには違和感に思えた。
アンジェは絵画を外し、地面に置く。
そこには、
「やっぱり、この部屋であってたみたいですね。ここに岩文字が記されている。」
「特殊な文字だな、俺には読めない。セラかオウロは読めるのか?」
「昔勉強していた古代文字が使われているみたい、私なら少し読めるかも。」
「すごいですね!セラさん!なんて書いてありますか?」
セラは壁の文字を読んでいく。
「アテネ、古代の騎士、国に仕える者、ここに讃える。ロイ、マゼラン、ガウス、アトラス家。我ら、命を懸けて、アテネを守る、守護者なり。」
「アトラス?それって、オウロの。」
「そうだね、僕の苗字だよ。でも、守護者だなんて初めて聞いたよ。これはどういう意味なんだろうか?」
「私も長年ここで暮らしていたけど、守護者なんて初めて聞く内容だわ。ただ、ここに記されている家の名前は、アテネでも腕利の戦士達ばかりね。なんでわざわざここに記したのかしら?」
「紙や、他の資料にまとめて保管するだけじゃいけない理由があったんだよな。……だめだ、見当もつかない。」
リン達が見つけた、オウロの名前が書かれた岩文字。
多くの資料が保管されているアテネ、および城であるのに岩文字で敢えて残されている4つの家名。
はたして、オウロを含んだ守護者と呼ばれる人たちはアテネにとってどんな役割を持つ者達なのか?
そして、なぜオウロは守護者について知らされなかったのか。
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