後編①

 おおよそ週に一度、コウキくんと小夏ちゃんのバイトが重なる日があり、その日の小夏ちゃんは、いつもにも増してキラキラしている。


 二人のやり取りを見ていると“姉さん女房”のラブラブ新婚家庭と言った感じで……とても微笑ましい。ただ、その影響か……若い女の子の来店がちょっと減る様で……

 せっかくバイトが二人居るのに、コウキくん一人の時より来客数が減って“店長”としては少々残念なのだが……“素”の私としては見ているだけで幸せな気分になれた。


 考えてみると……自分が味わった、あの“荒んだ”新婚生活とは全く違った二人のふんわりとした雰囲気は……自分も幸せな新婚生活を追体験している気がして、癒されるのだ。



 そんなある日、


「今日もバイト二人シフト! また癒されるな!」と二人を見ていたのだが……どうも小夏ちゃんの様子がおかしい……そう言えば今日は私も熱っぽい……「風邪が流行っている」とお客様もおっしゃっていたなあ……


「小夏ちゃん! 今日は少し元気ないようだけど……ひょっとして風邪? 先に休憩入る?」と尋ねると、小夏ちゃんは小声で私に囁いた。


「違うんです……明日から3日間、カレと旅行なんですけど……」


「えっ?! まさか旅行前に喧嘩したとか??」


「いえ! 喧嘩はしてないんです!! ただ……最近は、カレも忙しいし、会うのもちょっと食事するくらいで、それもお互いスマホいじってって感じなんですけど……」


「うまくいってないの??」


「カレの方は変わってないんです、多分……変わったのは私の方で……」


「気持ちが離れた?」

 そう尋ねると小夏ちゃんはコクリ! と頷いた。


「お泊り旅行、それも二泊だから……間違いなく、カレ、迫ってくるだろうし……」


「まあ……男の子だしね」

 と自分の“過去”を振り返りながら私は言葉を継ぐ。


「するのがイヤ?」


「…………」と小夏ちゃんは言葉に詰まる。


「他の誰かを思い浮かべてしちゃうってコも居るみたいだけど」と水を向けると、小夏ちゃんは俯いてしまった。


 私も自分の事みたいに胸がシクシクしてしまったのだけど……


「まだ、お付き合いしてるだけなんだから! もしのだったら、お別れした方が後悔が少ないと、私は思うよ」

 と言ってあげるのが精一杯だった。



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