大人数のお嬢様と王女・1人の王子

ゆうめい

第1話

星明かりの下、黄金の馬車が続々とグリフィンの城門をくぐる。今宵は城主である若きディミトリ王子主催の、年に一度の盛大な舞踏会だ。馬車から降り立つのは、皆、近隣諸国から集まった、ため息が出るほど美しいお嬢様方や王女たち。彼女たちは皆、ディミトリ王子との結婚を夢見ていた。

だが、王子にはある秘密があった。彼は呪いによって、真夜中の鐘が鳴り響く瞬間、醜い獣の姿に変えられてしまうのだ。その呪いを解く唯一の方法は、獣の姿の彼を心から愛し、キスをする女性を見つけること。しかし、どの女性も王子の真の姿を知る由もなかった。

舞踏会が最高潮に達した頃、時計台の針は刻一刻と真夜中を指そうとしていた。王子は焦燥感を募らせながら、次々と女性たちと踊るが、皆、彼の地位や富にしか目を向けていないように見えた。

そんな中、一人の地味なドレスをまとった、どこか神秘的な雰囲気を漂わせる女性が王子の目に留まった。彼女は他の女性たちのように豪華な装飾品を身につけておらず、ただ静かに舞踏会の様子を見守っていた。

王子は彼女に歩み寄り、踊りを申し込んだ。彼女は少し驚いた様子だったが、優雅にそれに応じた。二人が踊り始めると、まるで魔法がかかったかのように、他の誰もいない世界にいるような感覚に包まれた。彼女は王子の目を見て話し、彼の心の内にある孤独と苦悩を理解しているようだった。

そして、真夜中の鐘が鳴り響いた、その瞬間。王子は苦痛に顔を歪め、その場に崩れ落ちた。周りにいたお嬢様方や王女たちは、悲鳴を上げながら逃げ惑う。王子の美しい姿は消え去り、代わりに恐ろしい獣が横たわっていた。

皆が恐怖に駆られる中、先ほどの地味な女性だけが、逃げずに王子の傍に駆け寄った。彼女は獣となった王子を前にしても怯まず、その瞳には憐憫と優しさが宿っていた。「あなたは、本当は優しい方なのですね」と、彼女は涙を浮かべながら呟いた。

そして、他の女性たちが見守る中、彼女は意を決して、獣の額に優しくキスをした。その瞬間、城中にまばゆい光が放たれ、獣の姿はみるみるうちに消え去り、元の美しい王子の姿に戻った。

呪いが解けたのだ。王子は驚きと感謝の眼差しで彼女を見つめた。彼女こそが、王子の外見ではなく、心の中にある真の価値を見抜いた、運命の相手だった。二人は手を取り合い、残りの人生を共に歩むことを誓った。他の女性たちは、真実の愛の力の前で、自分たちの浅はかさに気づかされ、静かに城を後にした。

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