怪異まみれのボーイミーツガール、なのでしょう。
主人公、嫌がっているみたいなのが面白いのです。きっとツンデレです。
もちろん受け取り方にもよりますけど、本作は怖いという印象よりは、どこかユーモラス。
主人公だけが見えるバス停に佇む存在。
気になって、それに関わる塑像を拵えたら意外な結末を迎えた。
そんな物語です。
主人公が自分から関わりに行くのを〝好奇心〟なのか〝呼ばれた〟かのどちらに解釈するかで印象が変わるかもです。
本作に限らず、二ノ前さんの描かれる世界は色々なものが詰まっています。
怖気や呑気、可笑しみや悲しみ、無残さや残念さ、愛らしさや惨たらしさ。
等など等など。
言葉にならない事柄を綴ってあるからでしょうか。
言うに言われない不思議な感覚がするんですよね。いつも。
日常と非日常の〝あわい〟は案外すぐ隣にあるのかもしれません。
二ノ前印のお話は、そんな気分に誘われるものなのです。
だから読むと楽しいのです。
または、よくわからない気分になるかもしれません。
どちらになるかは────読んでからのお楽しみですね。
異界を覗き込む。そのワクワク感がふんだんに味わえてとても楽しかったです。
主人公は毎日のバス通学の途中、「不思議なバス停」を見つける。そこは自分以外の誰一人として存在を認識しておらず、おそらくは「異界の一部」なのだろうということがわかる。
ネットに出てくるような「きさらぎ駅」など。現世とは異なる空間に存在しているのがそのバス停であり、自分だけがバスの窓からそれを垣間見ることが出来ている。
この設定の段階でホラー好きの心は強烈にくすぐられました。バス通学という日常の時間の中から、ふと異界を覗き込める。
そしてその異界には、迷い込んだまま出られなくなったと思われる少女の骸骨が鎮座しているのが見えて……。
きさらぎ駅。謎のバス停。さまよう骸骨。現世にいながら「異界」の様子を観測し、それに想いを馳せるという感覚。
安全な場所にいながら未知の世界を知ることが出来るとわかった主人公が、どれほど心を惹かれてしまったのか。強く興味を刺激されました。
そして、主人公が次に取る行動。それが引き起こす結果というのが、またニヤリさせられるものでした。
現世と異界。その隔たりと繋がり。そんな絶妙なバランス感覚と、異界というものが持つ不可解で未知数な強い魅力。そういう空気をとにかく味わえる、とても楽しい作品でした。
主人公は不思議なバス停でぼろぼろのセーラー服を着た骸骨を見つける——。
やはり、作者さまの描かれる女性はかわいらしくて好きです。なんだか、たまらなく愛おしくなるのです。
この作品に出てくる女性にもまた、ほっこりするような愛らしさがあります。骸骨だろうが服がぼろぼろだろうが、かわいい人はかわいいんですよね。
私はもう彼女がかわいくて満足してしまったのですが、主人公にとってこの出会いが幸せなものなのか、と考えると、ちょっと答えは出せませんでした。
個人的にはもう、ふたりには きらきらした日常を送ってほしいのですが、それにはちょっと不穏な感じのする場面があり……。
優しく、不思議で、けれどもしっかりと怖いホラー作品でした。大満足です。
ぜひぜひ。