お泊まりデートは計画的に


 目を覚めすとベッドの上で、隣に先生が! なんて期待したがそんなことはなかった。

 着替えを済ませてリビングに行くと、先生はまだソファで眠っていた。これは寝顔を拝むチャンス!!

 抜き足差し足で側まで行き、先生を見下ろす。力が抜けたあどけない寝顔にキュンとする。なので、わたしは禁忌を犯すことにした。

 スマホを取り出し、カメラを起動。画面に先生の寝顔を収めてシャッターをタップする。パシャリと思ったより大きな音が響いて驚いていると……。


「……こら、何をしている」


 寝起きのハスキーな色っぽい声にドキリとする。先生が目を開けてわたしのことを見つめている。


「簡潔にいうと盗撮です」


「そこは“何でもないです”とか言って慌ててほしかったのだが……まぁいい、おはよう」


 寝起きだからだろうか、先生の笑顔がいつもより幼くて見えてキュンキュンしてしまう。


「おはようございます、先生!」


「“先生”、じゃないだろう?」


「え?」


「何だ、忘れたのか?」


 夜中、先生と話したことを徐々に思い出していく。


「ふたりきりの時は名前で呼び合うんだったろう? しず」


 そ、そうだった!! でも何だろう、こうして改まると恥ずかしいな。だけど、勇気を出さないと!


「はい、そうでした。あ、ああああきたかしゃん!!」


「“あ”が多いし“さん”が“しゃん”になっているぞ? うーん、夜のお前はもっと大胆だったのになぁ」


 先生とキスをして、おねだりして、イチャイチャがどうだとか言ったことも思い出して──。


「う、ううっ、恥ずかしぃ……」


 恥ずかし過ぎて今直ぐにベランダから飛び降りたい、ここは3階だから死にはしないだろう。


「すまんすまん、からかい過ぎた」


 頭を撫でられ、気持ちがよくて目を細める。


「それにしても、朝目覚めたらお前がいてくれるというのはいいな。活力が湧いてくる」


「そ、それはわたしもです。先生に一番に“おはよう”を言ってもらったり、言ったり出来て嬉しいです」


「かわいいことを言う。なら、おはようのキスをするか?」


 おはようのキス、だと?? なに、そのバカップルみたいなの。そんなの、そんなの……。


「し、したいです……」


 当然したい! したいのだが、何だか頭がくらくらして体が熱い。思考も上手く定まらなくなってきた。


「赤い顔をしているな」


 先生の手が頬に触れる、冷たくて気持ちがいい。


「熱があるじゃないか、大丈夫なのか?」


 ……ああ、きっとあれだ。


「初デート、初お家デート、初お泊まり、初キス、初名前呼び合いと新しいことが続いたのでキャパオーバーで発熱的な……う~ん、」


 わたしはそのままあきたかさんに身を預ける。


「ああ、すまない。この次からはもっと計画的にいこうな。よしよし」


 わーい、また頭を撫でられた。うれしー。うう~、くらくらするぅ~。



 こうしてわたしは彼氏のお家でお泊まりデートという甘酸っぱい初体験を熱で締め括るのであった。悔しい!



《終》

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続・あなた色に染まる あおじ @03-16

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