冒険者に憧れて

生前葬

第1話 始まりの物語

 これは、どうしたものか。


 とある冒険者街の、とある食堂兼酒場。そこがこの男......ギルの仕事場であり、今日も今日とて疲れた冒険者に飯と酒を振る舞うべく、集合住宅からに店へたどり着いた矢先の出来事であった。


 ギルが店にたどり着いた時、その扉の前には、小さなバケットとメモが置かれていた。その中には生まれて間もないであろう赤子が、毛布にくるまれぽつん、としていた。


 辺りを見回してみるが、親らしき影は見当たらない。メモを確認してみると、『どうかよろしくお願いします』と一言だけ書かれていた。


 ふと、手を伸ばしてみる。一体どれぐらいの間放置されていたのだろうか。少しずつ寒くなり始めたこの街にさらされていた頬は、赤子のものとは思えないほど冷たかった。


 私の手に気がついたのだろう、赤子はおぎゃ、おぎゃあと弱々しく、しかし、確かな力強さで泣き始めた。


 ギルは大きく溜め息を吐く。一体、私にこの赤子をどうしろというのだ。


 仕方なく、ギルはひとまず赤子を店の中へと運び込む。

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