第23話 魔法使いめざして



 ほんと、このダンジョンって、何がどうなって、こんなに歩きまわらなきゃいけないんだか? 道なりに進んでるだけなのに。


 出た! またまたビッグワームだ。さっきから、コイツしか出ない。


「タイル! タレス! 呪文だ」

「プチファイア、プチファイア、プチファイア、プチファイア、プチファイア、プチファイア、プチファ——」

「プチファイア、プチファイア、プチファイア、プチファイア、プチファイア、プチファイア、プチファ——」


 さすが双子だな。早口言葉みたいに呪文連呼してても、完璧シンクロしてる。


 けど、魔法はいっこうに使えない。やっぱ、双子に才能がないのかなぁ? それか、緊張感がたりてない? いざってときにはあたしが助けるっていっちゃったから、心のどっかで安心してるのかもなぁ?


「うわうわうわ。こっち来た!」

「師匠、助けて!」


 双子にむかって口を大きくあけ、毒液噴射直前のビッグワームに、サッとナイフをなげる。もちろん、あとでナイフは回収してるよ。武器大事。お金はもっと大事。


「はぁ、やっぱムリっすよ。師匠」

「おれら、才能ないのかな?」

「ええ? 才能ないのはタイルだけだろ? おれはあるよ」

「何いってんだ。さっきから、ぜんぜん使えてないくせに」

「なんか腹へっちゃって」

「おれもー」

「……」


 はいはい。最後の沈黙があたし。

 やっぱり、遊び気分だよな。ぜんぜん危険を感じてない。

 よし! 決めた。ここは一発、ドロンだ。


「あれ? 師匠?」

「どこ行ったんすか?」

「いなくね?」

「いない」

「ええー? おれら、見すてられたとか?」

「えっ? こんなダンジョンのまんなかで?」

「だって、しょせんは無料ガイドだからさ。おれらが使えないんで、イヤんなったんだよ」

「ええー!」


 しめしめ。双子から、あたしは見えてないらしい。って、そっと近くの大木にのぼっただけなんだけど。物音一つ立てずに静かに移動するのはシーフの得意技だ。


「ど、どうすんだよ? おれ、帰り道わかんないぞ?」

「おれもだよ」

「えっと、とりあえず、進めばいいんじゃないか?」

「たしか道なりに進むだけっていってたもんな」


 ふうん。けっこうかしこいな。ちゃんとおぼえてたんだ。


 双子は恐る恐る進みだす。木の上からそれを見てたあたしは、スルスル下におりて、つけていった。


「ほんとにこっちであってんのか?」

「さあ。たぶん——出た! さっきのと違うモンスターだ!」

「デッカいムカデ!」

「ムカデって刺すんだよな?」

「そんで毒がある」

「ギャー! もうヤダ!」


 よしよし。だいぶ切羽つまってきたな。双子たち、魔法のことなんか忘れて、さっさと棒切れで倒してる。Fクラスダンジョンでならしてるから、多少、手数はかかっても、充分、倒せてしまう実力を持ってるんだ。


 早くしないと、そろそろ出口だ。このままだと、すんなり外に出ちまうなぁ。


 よし。さきまわりして、モンスターを数匹集めてこよう。


 双子がオニオニムカデと戦ってるすきに、そっとうしろを通りぬけて、さきまわりした。そして、そのへんのモンスターと遭遇しては倒さず、ひきつける。


 このへんかな? ぼちぼち双子がやってくるころ。ほらほら、来た来た。じゃ、隠れるか。


「うぎゃッ。またモンスターだ! 今度はいっぱいいる!」

「ぼ、ボスなんじゃないか? Eクラスのマスターはザコが何匹も出ることあるって!」

「うわー! 来るよ」

「助けて! 師匠ー!」

「あんなやつ、師匠なもんか。おれたち見すてて、とっくに帰っちまったんだよ!」


 見すててねぇよ……。


「ヤダよ。怖いよ。リゲル兄ちゃん、助けて!」

「泣くなよ。タイル」

「タレスだって泣いてるじゃん」


 ビッグワーム二匹にオニオニムカデ一匹、それに、野生のイノシシまでついてきちゃったもんな。双子だけじゃ、かなり厳しいよな。


 カチカチと牙? 歯? わかんないけど、オニオニムカデが口の両側のハサミみたいなのを鳴らしつつ、二人に襲いかかる。それが合図になったのか、ビッグワームも大きく口をあけた。


「く、クソッ! ヤケクソだー!」


 棒切れふりまわしたのは、タレスなのかタイルなのか。たまたまよこなぎにしたのが、運よくオニオニムカデの側頭部に入った。ムカデ、ダウン。


 けど、そのすぐうしろから二匹のビッグワームが毒液を吐く。


「うわー!」


 ムカデを倒したほうが、まともにくらって尻もちをつく。


「し、しびれるよ……」


 ああ、もうこのへんまでかな? 助けてやるか。一番うしろで足をかきながら、ブヒヒン、ブヒヒン、鼻息荒くしてた野生のイノシシが今しも走りだすし。


 しびれてないほうが木の枝かまえるけど、あっけなく体あたりされる。ヤバイ。あのままじゃ、ふみつけられる。


 そう思った瞬間、しびれてるほうの手元が赤くなった。

 あれって、もしや……?

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