33.依頼品の納品
「うぅ……。商業ギルドに行くの、辛い……」
「全く。ヒナは仕方がないな。物を作っている時との落差がありすぎる……」
人を避けながら通りを進んで商業ギルドを目指す。いつもだけど、どこかに行く時が辛い。人がいるところにいかなくちゃいけないし、人と対面しなくちゃいけないし。先のことを考えると気が重い。
シオンさんに励まされながら通りを進むと、ようやく商業ギルドが見えてきた。だけど、これからが大変だ。だって、職員と対面しないといけないから。
恐る恐る、扉を開けて中へと入る。やっぱり中は人でごった返していて、入るだけで心臓が圧迫される!
「うっ……死んじゃいますっ」
「今まで死ななかったら大丈夫だ。さて、例の職員は……いたな」
「うぅ、緊張、するぅ……」
シオンさんが率先して動くと、その後ろを弱弱しくついていく。そして、その職員の前に来ると――。
「ようこそ、商業ギルドへ! ヒナさん、シオンさん。よく来てくださいました!」
満面の営業スマイルを振りまいて話しかけてきた。うぅ、やっぱり圧が強い……!
震える体でなんとか席に付くと、その職員が慣れたようにシオンさんに話しかける。
「今日は何かありましたか?」
「実は納品予定のポーションが出来たんだ」
「もう、出来たんですか!? は、早いですね!」
「ひっ! ……は、はい……」
いきなり立ち上がるから、ビックリしちゃった。私はビクビクしながら、アイテムボックスから二種類のポーションを取り出して並べた。
「こ、これは!」
その瞬間、職員の目が光った。
「な、なんですか、これは! 全然市販の物と違うじゃないですか! ど、どれだけ改良したんですか!?」
「えっと……ビンから……です」
「ビ、ビ、ビ、ビンから!?」
ようやく声を出すと、職員は目が飛び出んばかりに驚いた。
「この瓶、未だかつてないほどの高品質なガラスじゃないですか! こんなに透明なガラスは見たことがありません! 一体、どうやって作ったんですか!」
「ヒィッ! ふ、普通に……ざ、材料を混ぜて、やや焼いただけですっ」
「ふ、普通に!? 普通にやって、これだけの高品質なガラスを作れるんですか!? 一体、どんな特別な素材を使ったんですか!」
「そそそ、素材もっ、普通、ですぅ……」
「普通!? 普通とは、一体!」
「まぁまぁ、落ち着け」
なんとか返答すると、職員が頭を抱えた。そんな職員をシオンさんが精神魔法でなだめる。
「し、失礼しました……落ち着きました。正直、ポーションの瓶にしておくのがもったいないくらいです」
「で、でも……その、ちゃんとした物を、作りたかった……ので」
「そうでしたか、そうですよね。ヒナ様はクラフターですから、そういう気持ちがあることを失念しておりました。とにかく、最高の瓶をありがとうございます」
「い、いえ……」
良かった、喜んでもらえた。
「肝心の中身も……今までとは色も透明度も違います。素晴らしいポーションですね。まるで宝石を液体にしたかのような澄み切った輝きで、揺らすたびに光が細かく反射して……。香りも穏やかで、薬草特有の刺激臭が全くありません。ここまで純度が高く、余計な成分が一切混ざっていないポーションなんて、王都の錬金術師たちでも滅多に作れませんよ。本当に、見事な出来栄えです」
「は、はいぃ……」
凄い褒められた。嬉しいんだけど、なんだか圧が強くて身構えてしまう。
「この度は依頼をお引き受けいただきありがとうございます。ヒナ様に頼んで、本当に良かったです。これからも、何かありましたら相談させてください」
職員は最後は穏やかな顔をして謝礼を手渡してきた。何はともあれ、これで無事に納品出来た。ようやく、一仕事を終えた達成感を覚えた。
◇
「ふー、山場は越えましたね」
「納品が一番の山場だったよな」
屋敷に帰ってきて、ようやく一息付けた。ソファーに寝転がって対面して疲れた体を癒していく。
「だが、問題が一つ……」
「えっ!? 私、なんかしちゃいました!?」
「ヒナが作ったポーションがどれだけの効果があるのか、ということだ」
「まぁ、最高の初級ポーションを作ったんですから、普通の初級ポーションよりも効果があるって信じてます」
「とんでもない効果になりそうな予感がしてきた……」
そういって、シオンさんは悩まし気に頭を横に振った。
「みんなの役に立てばいいですね。一仕事終えましたし、また美味しい料理でも作って英気を養いましょうよ」
「うーん、だがなぁ……」
「今度はカレーを作ってみましょうか」
「カレー!? つ、作れるのか!?」
「はい。必要なスパイスを入手しておいたので、作れますよ」
「そ、そうか……。食べてみたい……」
カレーの言葉にシオンさんが嬉しそうにしてくれた。やっぱり、異世界に来ても食べたくなるよね。
「じゃあ、早速作りましょうか。シオンさんはどんな辛さがいいですか?」
「普通の辛さにしてくれ」
「分かりました。楽しみにしていてくださいね」
良かった、シオンさんが楽しそうにしてくれて。よし、美味しい料理を食べよう!
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