第3話 スナイパーvs突撃兵
雪山の中、ザクザクと音を出しながら進む一行がいる。数は二十一人と大所帯の人数だ。その目的は背後から奇襲や工作を行うために送り出された部隊だ。
「パン!」
と乾いた音がこの雪山に響き渡る。
歴戦の戦士たちはこの音を聞いた瞬間に体を低く、地面と並行になるように伏せる。だが、初陣の兵士にはこの判断をするための経験はない。
その初陣の兵士は頭を貫かれ、即死する。
「スナイパー!高所注意」
仲間だった死体が倒れた方向を確認するとすぐに体を枯れ木の裏に隠す。
「パン!」
と再度乾いた音が鳴る。銃弾は先ほどいた場所を貫き、雪の中に穴を作る。
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「ここはもうダメか」
そう一人小言を呟いたのちに、高台にいたスナイパーは移動を開始する。
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この突撃隊のリーダーがちらっと後ろの仲間を確認し、手で合図を出す。
『行くぞ』
双眼鏡を取り出し、木の幹から頭を出し一番近い山頂を見る。そこには一瞬人影が見えていたが、その姿は奥へ消える。
(いなくなったのか?今のうちだ)
木の幹を移動しながら、そのスナイパーに近づいていく。
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「ん?」
(近づいてんじゃん)
敵が近づいているのが目に入る。さっさと殺すためにスナイパーライフルを構えた。
雪が光を反射し、それによりスコープが光る。
その光を察知した突撃兵のリーダーがすぐに木の幹の裏に隠れるのだった。
「早く曇ってくれないかな」
現在の空は快晴だ。それにより、スコープがあることで場所がバレてしまう。
「パァン!」
乾いた音が鳴る。狙われたのは隠れるのに間に合わなかった新兵だ。その足を撃ち抜かれ、動きが封じられる。
まずは一人、残る突撃兵の数は十九人だ。
人数を犠牲に近づいてくるようだ。仲間が死んだとしても振り返らず、まっすぐ突き進んでくる。
(ゾンビかよ)
***
突撃兵の数は十五人になる。そのうち数名は足に傷を負い、動くことはできない。スナイパーは一旦顔を隠し、何か作業を行うのだった。
「行くぞ!」
決死の突撃が始まる。もしこのタイミングで覗かれてしまうと、撃ち抜かれてしまう。ある意味賭けとも取れる行動だ。
スコープの反射光が見える。
「退避!」
全員が木の裏に姿を隠す。その次の瞬間だった。その隠れていた仲間の木が爆発する。木々が砕け、この残骸が一名の兵士の体を貫く。
障害物がなくなり、その体は露わとなる。スナイパーライフルの銃弾が飛んでいき、頭を貫く。
残り動くことができるのはリーダーを含め九名だ。
_____
「赤の8、青の4」
「はい!」
とスナイパーライフルの近くには一人の青年がいる。援助として派遣されている者だった。その者は地面にスイッチを置いており、言われた色と番号が合うスイッチを押していく。
そう爆弾の起爆装置だ。
次々と爆発していき、隠れている者が負傷しながらも姿を現す。
その体をスナイパーライフルで撃ち抜いていくという作業だけが残っている。
(退屈だな)
その目の前から突撃してくる兵士を撃ち抜いていく。
「全部」
「了解です!」
そう言いながら全てのスイッチを押し、目の前にある木々が全て爆発する。そこからスナイパーライフルで打ち抜き、全滅したのだった。
後ろにあった木々も爆発していることから、スナイパーライフルは最初から自分の領域で戦っている。
「十四か」
「十分でs」
サポートをしていた青年が切り捨てられる。突撃兵のうち、二手に分かれ横から奇襲を行っていた。
その部隊が合流し、攻撃を仕掛けた。
本来であれば、爆弾を警戒しておらず横から向かったものが時間を稼ぎ、スナイパーの動きを封じるのが目的だった。だが、その目的は達成されない。
咄嗟に振り向き、スコープを覗かずに引き金を引く。一番近くにいた兵士の胸を貫く。ダン、ダン、ダンと岩にぶつかりながらこの山道を下っていく。一人の兵士が巻き込まれ、一緒に落下をしていく。
「十五」
近くにあったリュックを背負い、山頂から飛び降りる。そのリュックの中に入っているのはパラシュートだった。そのパラシュートが開き、ゆっくりと降りていく。
くるりと回転し、スナイパーはスコープを覗く。
ここは山頂、体を隠すことができるものはない。
この中で一番年上のものが体を張り、放たれた銃弾をその身に受ける。
「……十六」
突撃兵たちは、崖を走るように降りてくるのだった。
(やばいな)
腰に刺さっているナイフでパラシュートを繋いでいる部分を切り、リュックを脱ぎ捨てる。
追いかけてくる者が後ろにいる。残っている人数は四人だ。スナイパーライフルを撃ち、三名殺す。
(弾切れ。これが最後か)
最後のマガジンを差し込む。その間にどこかに移動しているのか、崖から降りた後の姿を見ることができない。
左右から挟むように短剣を持った突撃兵がやってくる。それを飛び退くようにして回避をし、ライフルを構える。だが、すぐに木の裏に隠れることで意味はなさない。
その狙っていない方の男が攻撃を仕掛けるために近づいてくる。その近づいてくるものをストックで殴りつける。
一瞬で持ち直し、倒れたその頭に銃口を当て引き金を引く。これで残りは一人だ。至近距離で放ったことで、その振動が腕に来る。
最後の兵士が近づいてくる。これも手に短剣を持っていることから、最後の武器なのだろう。
スナイパーは腰につけている手榴弾のピンを抜き、投げつける。ものの数秒で爆発し、地面の泥や雪が舞い上がる。
最後の兵士は後ろに飛び退くことで爆発に巻き込まれない。そしてすぐに横に動き出す。
「パァン!」
スナイパーから弾丸が放たれた。兵士の背後にあった木に刺さる。
その舞い落ちる泥の中を進み、スナイパーに近づき、突撃をする。銃口はまだ先ほどと同じ方向を向いている。
急な反応を見せ、銃口はその兵士の方に向く。そして、引き金を引いた時だ。
「カチ、カチッ」
と音を鳴らすだけだ。そう弾切れだ。
ここぞとばかりに弾切れを起こし、兵士が近づく隙を与える。諦め弾丸を受けるつもりだった兵士の目に火が灯る。
スナイパーもまだ諦めていない。腰につけている手榴弾を引き抜き、距離を取ろうとする。
それよりも先に兵士の方が早い。タックルをし、両手が封じられる。さらにその衝撃でスナイパーライフルが手の届かない位置に飛ばされる。
倒れ込むスナイパーの上に兵士は馬乗りになる。そしてその腹に何度も短剣を突きつけるのだった。スナイパーから力は抜け、もう生きていないにも関わらず、その攻撃は続いている。
スナイパーの力が抜けた衝撃で、指がかかっていたピンが抜ける。まだ、恨みとばかりに短剣を突き刺している兵士にはそのことに気がついていない。
「ドン!」
と手榴弾が爆発し、兵士とスナイパー共に死ぬのだった。
____
後書き
戦闘の設定
スナイパー vs 突撃兵(21人)
フィールド:雪山、スナイパーの罠
結果:引き分け
人数:突撃兵が21人
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