紫紺の夢
光春樹
プロローグ
夢。
叶えたい夢。
ささやかな夢。
みんな持ってる。
でもそれが大きすぎる夢に変わった瞬間
人は苦しむことになる。
深い絶望には大きすぎる願望が生まれる。
適うには遠すぎる。
その苦しみは本人にしかわからない。
それはもはや夢と呼べるのだろうか。
そして、それを叶えられる—―
そう言われたとき
受け取らないものなどいるのだろうか。
◇
夢を見た。
泥に塗れた日々を抜け出して
自分の足で立ち、大事な人を守る。
幼い頃に信じた、物語の英雄のように。
生まれながらに選ばれしものとして
誰よりも高く、誰よりも速く
力を振るい、嘲りも憐れみも超えて
ただまっすぐ、光をつかむ。
そうしていれば
きっと孤独は消えて
心は満たされると思っていた。
子供の頃はまだ
夢と現実を無意識によく切り分けられた。
だが気づけば
歳を重ねるほどに
夢は遠く霞んで
手を伸ばすたび
指先からすり抜けていった。
それでも
もう一度だけ信じたいと思う。
世界が優しくないなら
せめてこの胸の奥に
小さな灯を抱えていたい。
いつか——
誰にも追いつけないほどの力で
この人生に
意味を与えられると。
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