紫紺の夢

光春樹

プロローグ

夢。


叶えたい夢。


ささやかな夢。




みんな持ってる。


でもそれが大きすぎる夢に変わった瞬間


人は苦しむことになる。




深い絶望には大きすぎる願望が生まれる。


適うには遠すぎる。


その苦しみは本人にしかわからない。




それはもはや夢と呼べるのだろうか。




そして、それを叶えられる—―


そう言われたとき




受け取らないものなどいるのだろうか。







夢を見た。


泥に塗れた日々を抜け出して

自分の足で立ち、大事な人を守る。

幼い頃に信じた、物語の英雄のように。


生まれながらに選ばれしものとして

誰よりも高く、誰よりも速く

力を振るい、嘲りも憐れみも超えて

ただまっすぐ、光をつかむ。


そうしていれば

きっと孤独は消えて

心は満たされると思っていた。


子供の頃はまだ

夢と現実を無意識によく切り分けられた。


だが気づけば

歳を重ねるほどに

夢は遠く霞んで

手を伸ばすたび

指先からすり抜けていった。


それでも

もう一度だけ信じたいと思う。


世界が優しくないなら

せめてこの胸の奥に

小さな灯を抱えていたい。




いつか——

誰にも追いつけないほどの力で

この人生に

意味を与えられると。


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