現実理想主義の王国へ
ゆうめい
第1話
日本のどこにでもある大学の講義室。退屈な歴史の授業を聞き流しながら、俺はノートの隅に落書きをしていた。試験範囲は、古代国家の興亡史。しかし、黒板に書かれた「エルグ王国の興隆と衰退」という文字が、やけに目に焼き付いて離れなかった。エルグ王国、エメラルド大陸。フィクションの世界にしか存在しないはずの場所だ。
その日、図書館で課題の文献を探していると、ふと手が触れた古びた洋書があった。題名は『エルグ王国の伝説』。教授も知らなそうな、いかにも胡散臭い本だった。面白半分でページをめくった瞬間、洋書からまばゆい光が放たれ、俺の視界は真っ白に染まった。
次に意識が戻ったとき、俺は見慣れない場所に立っていた。
生暖かい風が頬を撫で、遠くにはエメラルド色に輝く山々が連なっている。足元には見たこともない草花が咲き乱れ、上空には二つの月が浮かんでいた。
「ここは……」
混乱する俺の目の前に、一人の兵士が剣を構えて立っていた。彼の鎧は見たこともない形をしており、その視線は警戒心に満ちている。
「何者だ、貴様。ここはエルグ王国の神聖な庭園。不審者は即刻、捕縛する!」
エルグ王国。
まさに、俺が数時間前まで、机の上で見ていたあの文字だ。
俺は学生だった。だが、たった一冊の古書が、俺をエメラルド大陸の南、エルグ王国へと導いた。
そして、ここから、俺の「物語」は始まった。
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