二か月の神様
@yuu1206
第1話 小さな丘の上の神社
風、丘、静かな夕日、遠くに聞こえる小学生の声、田んぼで鳴く虫の声、地面のアスファルト、神社。
綺麗だ。そう思う。ここは綺麗で神秘的であると。いつもここを通ってバス停に行くとき、そう思う。
あの神社はなんて茶色いんだ。右に見える丘の上にある小さな神社を見ていつも思う。私が知っている神社はもっと荘厳だ。もっと大きい。
約二年前からあの神社が気になっていた。今まで私が見た限りでは誰もあの神社に立ち寄っていない。それがなんだか不気味で、なにか怖いものでも住んでいるのではないかという憶測も出てきてしまう。
どうしよう。階段の前まで来てしまった。普通の神社よりは段数は少ないけれど、それでも一つ一つの段が直角すぎる。
自分の好奇心旺盛な性格は怖いものだ。無意識にもうすでに階段を上ってしまっているのだから。上ってからどうしようとかは全く考えていない。ただ何となく夕日がきれいかなとか町を見渡せるかなとかしか考えていなくて、本当に興味で上っているだけ。
けど、さすがに足が痛い。こんなに急な階段を上ったのは久しぶりだ。
すべて上り切り、ふうっと息をつく。そして同時に顔をあげた。
なんという殺風景。これを言ってはいけないのかもしれないが、誰か素人が建てたのではないかと思うほどの神社だった。なにか特別祭ってあるわけでもなさそうだ。狛犬っぽい狐っぽいものが一つ置いてあるだけ。周りには雑草だらけ。そして何より気味が悪い。 小さな倉庫のようなものが一つあるだけでその他になにかあるわけでもない。そもそもここは神社として機能しているのだろうか。
だけど、上ってしまった以上何もせずに出ていくのはさすがに失礼だ。
しかしながらお参りをする場所はなさそうであったため、狛犬にお辞儀をし、地上に降りることにした。
風が吹く。夕日がまた沈む。
誰かの気配がした。
背中が寒くなった。勝手に鳥肌がでてきた。これは私でもわかる。振り向いちゃだめなやつ。ここで振り返ったら絶対にだめなきがする。呼吸が荒くなってきた。ダメで。ここで倒れたら呪われる。それだけはだめ。
私は心臓を抑えながら後ろを一切見ず、急な階段を素早く降りた。
「はあ....はあ......っ......はあ......」
神社を降りきったところで息を整えた。まだ怖さと全力をだしたエネルギーの反動で脈が速い。
だけどあの神社を今なら振り返ることができるかもしれないと思ってしまった。怖いけど、見てみたかった。
私はゆっくりと冷や汗を垂らしながら神社を見上げた。
さっきまであった狛犬が
消えていた。
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