こちら恋愛斡旋業者
「このままでは若者の結婚離れが進み、出生率が低下してしまいます」
「これは由々しき問題だ。しかしながら、対策をしようにも……、人材が」
「仕方がありません。ここは民間委託、いえ、出産適齢期である大学にあっせんしましょう」
こうして、多くの大学で恋愛斡旋業者が生まれた。
「一つ聞きたいんだが。君はよく神崎さんと一緒にいるよな。どう思ってるんだよ」
「いやその」
「男同士だろ、正直に言えよ」
「可愛いと思ってる」
「ひゅ~、良かったじゃん、戸村君神崎さんのこと可愛いってさ」
実はつながっている電話の先。
一人の女性が顔を赤くしてう~う~と、恥ずかしさから声を漏らしていた。
各大学で行われていた恋愛斡旋業務。
その活動内容はバラバラだった。
しかし、カップル成立ごとに大学金から奨学金という名の援助が出るので、多くの学生がこぞって参加しているという状況だけは共通していた。
彼らの活動方式は単純だった。
付き合いたいと相談を受ける、もしくは、すきあってそうな男女を見ると、同性の隊員が話を聞き、行けそうと感じたら、もう一方の隊員が標的の人物のところに話を聞く。
どうしてか、スマホの電源が入ったままになってるのはご愛敬だ。
彼らはここにカップル成立を祝うと同時に、奨学金がアップする現状に内心ガッツポーズをとった。
「ところでさ、そっちだっていつも春香さんと一緒にいるような。内心どう思ってるんだ!」
「え!」
その一言で、今まで他人事だった春香が当事者に早変わり。
「いや、僕のことはいいよね」
「おいおい! お前だからこそ話したんだよ、こんな恥ずかしいこと。だったら、そっちも話すのが筋ってもんだろ」
「その、かわいいとは思ってるよ」
「だってさ、これから一緒に男子のところに突撃しません」
電話の向こうと同じく、女性たちも盛り上がってきた。
大樹のことをどう思ってるんだと、神崎は耳元でささやく。
「もうさ、言っちゃおうよ、せーのでさ」
春香の提案に神崎もうなずいた。
「「私も、『大樹』『戸村』のことかっこいいと思ってるよ」」
「おまえはかったな!」
こうして、この世界に二人のカップルが生まれた。
「いや~、これは予想外な結末だね」
「全くです。多くの恋人を作るために恋愛斡旋業務を行ったというのに、一番恋愛に発展するのが斡旋業者内だとは」
そういって、二人はせっせと上がってくる報告書をじっと眺めた。
「まぁ、恋愛に積極的な男女が共通の目的にまい進するんだ。こうなることも当然といえる。どうだい、私たちも関係を進めてみるのは」
「セクハラですよ、それ」
「はっは、手厳しいね」
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