トリックオアトリート
阿蘇山
トリックオアトリート
ハロウィンの夜、街はカオス。
信号無視のガイコツが「俺、死んでるから優先だろ」と主張し、ピエロがコンビニで「これ、爆弾?」とレジの店員をからかっている。
俺は警官コスチューム——いや、今日は本物の警官だ。制服はピッチリ、バッジはピカピカ、拳銃は……はい、空砲です。弾なんて入ってません。子供に「本物?」と聞かれたら「秘密」と答えるのが決まり文句。交差点で信号待ちしてると、後ろから「トリック・オア・トリート♡」と、まるでアニメの主題歌みたいな声。
振り返ると、そこにいたのはボンキュッボン魔女。スカートは「これ以上短かったら違法」レベル、帽子は「傾きすぎて落ちそう」、バケツは「カボチャじゃなくてスイカサイズ」。唇は真っ赤、目はキラキラ、そして——胸が「ドーン!」と主張してる。物理法則を無視したボリューム。俺の視線が一瞬、宇宙に吸い込まれそうになる。
「お菓子くれなきゃ、いたずらしちゃうよ?」俺、慌ててポケットをごそごそ。出てきたのは賞味期限切れのチョコ一枚とガムの包み紙。「これで……許してくれ……」すると彼女、ニヤリ。
次の瞬間俺のホルスターから拳銃がスッポ抜かれた。
まるでマジシャン。いや、手品の域を超えてる。「ちょっと待て! それは——」空砲が夜空に炸裂。近くのゾンビキッズが「うおおお! ガチ警官撃った!」と大興奮。
信号待ちのサラリーマンは「ひぃ!」と叫んでスマホを地面に叩きつけ、画面がバキバキ。コンビニの店員は「またかよ……」とため息をつきながら、割れたスマホを拾いに行く。
魔女お姉さんは拳銃をクルクルクルと指で回し、「いたずら、大成功♪」と、舌を出してウインク。チョコをひったくり、ヒールでカツカツカツと歩きながら、「お菓子は一枚じゃ足りないわよ? 次は箱でね♡」と、闇に溶けていった。残された俺は、ホルスターが空っぽ。さらに、ズボンのポケットからガムの包み紙まで盗まれてた。
次の朝、交番のロッカーに拳銃が戻されていた。銃身にはピンクのリボンで「Happy Halloween♡ 次はチョコ10箱で許してあげる」と書かれたメモ。しかも、俺の名札に「チョコ不足警官♡」と落書きされてた。……来年は、コンビニのチョココーナー丸ごと持参しよう。制服のポケットにスイカサイズのバケツも忍ばせておこう。いや、それでも足りない気がする……。
トリックオアトリート 阿蘇山 @asozan10000
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