第一章 第四話「部屋」
「わああ!」
カレンはセイラと別れた後、自分の部屋を前に驚いていた。約300㎡の、『VIP室』。あの後、カレンは校長室に行き、虹色の現象のことを説明した。すると校長、ルミア・バーガンディはVIP室を使うようカレンに言った。虹色については何も教えてくれなかったが。VIP室は寮で一番魔力の高い人が使う部屋ではないのかと思い、聞いてみるとVIP室を使うには一応きちんとした条件があるらしい。条件とは、「中級レベル以上の魔力を持つこと」なのだが、風属性寮だけなぜか優秀な生徒が少なく、高等科生でさえ誰も中級レベルに届いていなかったらしい。と言うことで、カレンは思いがけず寮で一番大きい部屋を手にした。
「私、もう中級レベルに行ってたんだ…」
カレンはひとりごとをこぼした。彼女は落ち着いていながらも、本当に驚いていた。ジャクレン王国の貴族女学院の授業では、彼女の魔法の成績は中の下だった。度々「光属性のくせに魔力は小さいのですね」と嫌味を言われたものだ。そんな自分が、VIP室に!?今までずっと、自分の魔力は小さい、光属性なのに、とコンプレックスを抱えていた。でも、これからは前向きに練習できそうだ。
『VIP室』正式名称『七階特別室』、白を基調とした明るい雰囲気のある部屋(家?)だ。大理石の大きな両開きの扉を開けるとなんと大広間(?)と大理石造りの階段があった。どうやら二階建てになっているようだ。
「建物は七階建てなのに?」
一階には絨毯が引いてあり、大理石の階段の下にある扉を開けると、川が見える窓から差し込む光が眩しい美しいキッチンがあった。暖炉に、コンロ、流し。全てが明るいミントグリーンで統一されていて、ブロンズで作られた花の形の装飾で飾られている。
キッチンにある扉から隣の部屋へ行くと、そこは食堂だった。大きい横長の窓から同じく光が差し込んでくる。横に長い純白のテーブルクロスのかかった食卓に、金の燭台が一対、銀のナプキン入れが八つ置いてある。花瓶も中央に置いてある。椅子はロココ調のミントグリーンの絹でできたものが八脚。静物画もかかっている。
一度大広間に戻り、階段の反対側へ行く。そちら側にあった扉を開けると、先ほどとは打って変わって、シックな空間が広がっていた。窓はなく、花形のピンク色のランプが天井からぶら下がり、床は木製、壁紙は星空のような色で、縦に金色の模様が入っている。そして何よりカレンが目を輝かせたのは壁にずらっと並ぶ本棚、そして魔導書、小説、本の王国!魔法と本が大好きな彼女にとっては、最高の空間である。中央には大貴族の執務室にある重厚感満載の木製の書机がある。椅子はまたロココ調のものだが、横長で紺色の上品さを感じさせる一品だ。
部屋の一番奥には、二階へと繋がる小規模の木製の螺旋階段があった。カレンは自分の好奇心に従い、そこを上って行く。すると、魔法陣がカレンの前に立ち塞がった。
「空間の、魔法陣…?」
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