この部屋

はるは

第1話

声だけが残っていた。

それが誰のものか、もう誰も知らない。




「こんにちわ」

「こんにちは」と返ってきた。

「おなかすいたね」

「もう春を過ぎ、夏になりかけているからな」

「そろそろ、外に出てみてもいい?」

「その足でか? どうやるのか見ものだが」

「おかあさんに、あいたい」

「まあ、すぐ会えるだろう」

返事はなかった。

部屋の奥で、蛍光灯がひとつ、かすかに明滅していた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

この部屋 はるは @kanpati

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る