私の従者

@akira1229

可愛い人とひどい人

「今日はまとめ髪にしてちょうだい。」


朝の光で、ドレッサーが淡く輝く。


「わかりました。」


髪を纏めるときは、髪の根本から持ち上げなくてはいけない。

なんの温度もない髪の先とは違い、

根本に近づけば、仄かに温かい。

なので従者は、必要以上にその温もりに触れないよう、細心の注意を払う。


「貴方、新しく入った子と仲がいいみたいね。」


お嬢様が、なんでもないことのように問う。

絨毯の敷き詰められた、豪華な調度品の割に小さな部屋。

外では鳥のさえずりが聞こえる。



「そうでしょうか。業務で被ることが多いだけです。」


髪にゆっくりと櫛を入れる。

お嬢様は、テーブルの上で簪を遊びながら、退屈そうに呟く。


「気立ての良さそうな可愛い人ね。」


鏡に映る侍従を見つめる。


「そうですかね。」


淡々と櫛で髪を梳かす。


「貴方は、可愛いと思わないの?」


簪を遊ぶ手がぴたりと止まる。


「全く思いません。」


花がほころぶように笑みが広がる。

勝ち誇ったように宣言する。


「ひどい人。私はとっても可愛いと思うわ。」


巻いた髪を肩に散らす。


「お嬢様、今日もお綺麗です。」

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