第9話 最後の選択

夜明け前、悠人は古いノートPCを開いた。

全ての記録をまとめ始めた。

メール、社内資料、取引記録、録音。

そして、自分の日記。

「誰も信じなくていい。

 ただ、俺が生きたという証を残す」

手が震えながらも、文章を打ち続ける。

やがて、朝の光が差し込んだ。

その光の中で、悠人は送信ボタンを押した。

《送信先:全メディア、SNS、告発サイト》

全てがネット上に放たれた。

同時に、悠人は玄関に向かった。

コートのポケットには、古い鍵と手紙。

“誰も悪くない。俺も含めて、みんな弱いだけだった。”

それが、最後の言葉だった。

彼は静かにドアを開け、街へ出た。

朝の光がまぶしく、少しだけ微笑んだように見えた。

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