零時の魔法
壁掛けの時計がちょうど深夜0時を指し示すと、ボーンボーンと低い鐘の音が部屋の中に響いた。
「皆さん、ありがとうございました」
「いいえ、自分の話を共有できてよかったです」
「本当、同じように苦しんだ人と話せて私も嬉しかったわ」
「ええ、私も……ひとつ気になることがあるのですが?」
御子からお礼を言われて、花村沙織、鷹山莉子と返事をし、鑑日葵が首を傾げた。
「なんです?」
「例のサイトの3つ目の質問が気になっていて……」
3つ目の質問は「夫が☆になったら、あなたは新たな
日葵は、当時その問いに「はい」と答えたもののずっとそのことが頭の片隅で引っかかっていた……。
「それは2つ目の質問にも関係しているわ」
「……と言いますと?」
とても美しい女性。
世に出てもおかしくない美貌を誇るがどこか影のある女性、御子。
「皆さんは、ご主人を☆にするためなら、自分を捨てることができると答えました」
たしかに答えた。
でもそれが新たな道と何の関係が?
「あっ……」
「これって……毒」
花村沙織がテーブルに覆いかぶさる。
続いて、鷹山莉子も意識を失うように椅子の背もたれに背中を預けてうなだれた。
「道って、もしかして……」
新たな人生ではなく、死出の道?
月明かりが魔性の笑みを浮かび上がらせている。
「さあ、それはどうかしら?」
騙された。
いったい何のために?
遠のく意識の中で必死に抵抗していた日葵も沈んでいく感覚に抗えなくなっていった……。
あれ?
鑑日葵は目が覚めると、自分の家のベッドで横になっていた。
起きて急いで朝食の支度に取りかかり、娘、美耶を保育園に送り出した後、一息ついた。
昨日のあれは何だったの?
夢?
でも、確かに森の中の洋館で3人の女性と話したはずなのに……。
日常が動き出す。
夫、鑑一輝は、確かに死んだ。
熊に襲われ、顔がメチャクチャになっていたが、この目で確認した。
だから、昨日のことが夢だったんだ。
──そう思い込まないといけない気がする。
──約6時間前。
「深町」
「はい、
洋館の中で意識を失った女性たちを見ながら御子が名を呼ぶと、隣の部屋からあの深町という男が現れた。
「もう
「──はい、少々お待ちください……おい、出て来い」
深町が入ってきた扉から見覚えのある男たちが出てきた。
「では、貴方達に命令するわ。元奥方達を丁重に自宅まで運びなさい」
御子の命令に素直に従い始めた男性たちは、気を失っている女性たちを部屋の外に運び始めた。
「
「洗脳されて苦しんでいる女性はたくさんいるでしょうから、それもアリだと」
「あら、元奥さんを2年も家に監禁してた男が言うセリフ?」
「これは出過ぎた真似を……申し訳ありません」
「構わないわ、今は私の
御子が窓のそばまで歩み寄り、外を見下ろす。
下では3台の車が用意されており、3人の女性が別々の車に運び込まれている。
「この世には下衆な男がたくさんいるから、まだまだ飽きないわね」
全員、夫を星にしたい あ、まん。 @47aman
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