第2話「ケーキを試みる」
恋とは
二人を繋ぐ
だけじゃない
周りさえも
明るくするんだ
憂塚先生 著 AnyWay.より引用
「おはようございます先生」
「ああ、おはよう」
「今日はケーキが朝ごはんですよ」
「って、ホールケーキじゃないか、こんな高価なものよく買えたな」
「ほら、言ったじゃないですか、本気で恋させるって」
「だがな、君と私の経費は共同だったよな」
「なに、品のないこと言ってるんですか、そんなんじゃ人は愛せませんよ」
「いや、私は孤独であり孤高である、ここに男としてのロマンを感じてるんだ、故に、間違いはない」
「なるほど、つまりは、一人孤独に生きて行くと、それでいいんですか」
「何を言う、孤独とは何よりも得難い、試練なのだよ」
「試練ですか、そんなこと言って、ただ自堕落に生きてません、人の目がないからって」
「そこまで推察するか、どうやら折れる気はないようだな」
「ええ、ホールケーキ、食べて下さい」
「まったく、仕方ない、この場は食後の後に持ち込もう」
「ええ、食べましょう」
「待て、なぜフォークが一つしかない」
「わからないんですかー。」
「まさか、フォークを売ったのか??ケーキを買うために!」
「な、わけないでしょ、あれですよあれ」
「何をもったいぶってる、あれではわからん」
「つまり口を開けて、このまま、フォークを寄せていく、あれですよ」
「まさか、それは世に聞く、あーん、というやつか」
「そうです、ほんとに気づいてなかったんですか、」
「まてまて、待つんだ」
「どうしました」
「いいか、私はな、これでも羞恥心といものがある、つまりそれは頂けない」
「何、言ってるんですか、誰も見てませんよ」
「だとしても、フラッシュバックを引き起こして、死ぬかもしれないだろ」
「どんだけ、純粋なんですか、あーんくらいで、死にはしませんよ」
「だとしても、何か大事なものを失ってしまような、そんな気がする」
「まったく、相変わらず、小心者ですね、男らしく頂いてください、ほら行きますよ」
「待て待て、まてーーー」
「はーい口開けないと、ほっぺについちゃいますよー」
「待て待て待てー」
「はい、あーん」
「う、うまい、」
「はい、これ実は私が作ったんです」
「そうか、だが何か大切なものを失ったような」
「何言ってるんですか、あーんくらいで喪失感に苛まれてたら、今後はやっていけませんよ」
「いやしかしな、人とは、順序だてて、しっかりとステップを刻んでいく、それこそ紳士たる所以だろ」
「またまた、今更なんです、恋人はすべてを認め合う、そういうラブパワーが働くんですよ、だから大丈夫」
「どんな理屈だ、ラブパワーなど明らかに、痛々しいカップルが言うことだ」
「でも、先生だって、おいしいって思ったでしょ、これはもう私のラブ頂いちゃった証拠ですよ?」
「そうなのか、そうなのかーー」
「はい、先生、もう逃がしませんよー胃袋掴んだら、乙女の勝ちです」
「なんだその常識、絶対、あーんはこれっきりだからな」
「わかりました、でも、寂しいですね。」
「急になんだ、あーんというのは以下に恥ずかしいかわかってないのか」
「では私にも試してみてくださいよ」
「なな、まさか、この私が君にあの、いかがわしいことをするのか」
「なんですか、いかがわしいって、恋のたしなみですよ」
「たしなみだと、まったく隅に置けない発言だ、恋など知らん、愛など知らんからなー」
「では先生さっそく、あーんを私にしてください」
「待て待て、私はさっき、恋など知らんといったんだ、だからもう終わりだ、ここで今日はもうしまいだ」
「えーいいですか、このまま私が羞恥を知らないで愛のたしなみを畳み掛ければ、先生はもっと恥ずかしい目に合う可能性があるんですよ、だから今のうちに、教え込まないと、愛がいたる方向に飛び火しちゃいますよ」
「ぬあああ、なんだと、だったらわかった、あーんをしてやろう、しかしこれで、思い知ると言い、どれだけ恥ずかしいかと、心臓がどれだけバクバク鳴るかというこの、思いを知るんだ」
「はい、お願いします」
「行くからな、ほら口を開けろ」
「はーい、あけましたよ」
「そんなに小さく開けるな、もっと大きく開けてくれ、これでははみ出してしまう」
「え、女の子の口はこんなもんなんです」
「そうか、なら、少し小さく切るか」
「いえ、そのまま、押し込んでください」
「なんだと、そんなことしたら、ほっぺについてしまうだろ」
「それはそれでうまく食べますから」
「わかった、じゃあもう知らんからな」
「はーい」
「どうだ、うまいか、」
「おいしいです」
「それと今の気持ちを教えてみろ」
「ちょっと恥ずかしいけど、うれしいですね」
「何を満面の笑みで言っている、わかったかこれほど恥ずかしいのだ、もう1回などできんだろ」
「いや、私、これなら、毎日でも行けます」
「まったく強がりよって、それとほっぺについてるからな」
「ええ、どこだろう」
「鏡で見てこい」
「先生、足がつっちゃって、動けません」
「何を言う、だったらとってやるよ、まったく」
「ありがとうございます。」
「まて、ふきんはどこだ」
「あーそういえば、朝に洗濯機にいれちゃいました」
「では、どうとれと言うんだ」
「そんなの、手でとるか、もっと大胆にとってもいいですよ」
「どう考えても手で取るしか浮かばんだろ、では、右当たりについてるぞ」
「え、先生、見えません、先生にとってほしいです」
「なな、君は、ほんとに何を言ってるんだ」
「恋とは、互いに支えあうんです」
「どう考えても、自力出来ることだろ」
「でも、乙女って、メイクしてるんですよ、それにふれないようにとるには、ピンポイントでとってもらうしかないです」
「お前、メイクしてたのか」
「はい、ナチュラルメイクですが、さっさ、とってください先生」
「まったく、どこまでも、手こずらせるな、わかった、しかし今度からは、メイクはしなくていい」
「え、どういうことですか」
「そんなの言わせるな、そのままでも今でも代わり映えしてないってことだからだ」
「あれ、先生、もしかして、ちょっと照れてます?」
「なな、何を言う、別に美しさは変わらないと言っただけだ、」
「ひゃあああ、うれしい、うれしいです先生」
「勘違いするな、メイク力がないなと言ってるってことだ」
「またまた、そんなこと言って」
「もういい、ほっぺのとってやるから、もうあまり、変な話をするな」
「はーい」
「とれたぞ」
「先生、それ食べていいですよ」
「な、なに言ってるんだ」
「だってふきん洗濯機ですし、口に入れるのが一番ですよ」
「いや、ふつうに、食器につけておくよ」
「へー、ま、いいですよー」
「まったく、いいか、いろいろと言いたいことがある、」
「なんですか」
「ケーキを食うのに、ここまで大変だったことはなかった、」
「ふふ、これが愛なんですよ、愛は普通より特別ですから」
「何が特別だ、もう知らんからな、」
「またへそを曲げても、今日の先生は一段と魅力的ですよ」
「また、意味もなく褒めよって、いいか、普通のほうがよかったな」
「ええー、本当ですか」
「本当だ、まったく」
「ふふ」
「なんで笑う」
「なんでもないでーす」
「まったくもういい、愛など愛など、知らん」
「かわいいですね」
「これは困っているという感情表現だ」
「そうですか、ふふ」
「ふんだ」
「ま、今日はこれくらいですね」
「そうだな、これ以上は、身が持たない」
「ふふ」
そうして二人は
ケーキを食べて
どこか満たされていた
言葉にならない
心の姿
これを先生はまだうまく掴めてない
それでも
一歩一歩進展していければと
私、白瀬は思う。
それでは興もいいのでここらで
まだ二人を見守ってほしい
どうかどうか
幸せになれるまで
それでは、また後談で。
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