2章

2-1

 四度目の出撃――そこでようやく戦力として認識されるようになったはいいが、友軍に敵を押し付けられたことで満身創痍となり、俺は自室ではなく医務室で眠ることになった。

 怪我の具合はそこまで酷いものはなく、無事に軽傷扱いで済んだことで治療もすぐに終わり、俺は医務室のベッドでそのまま眠ることになった。

 疲労の所為かあっさりと眠りに落ちた俺はぐっすりと朝まで寝た。

 医務室で目を覚ました俺が最初に目にしたのはリザルト画面。

 いつもより随分と縦に長い画面は今回の成果を雄弁に物語っている。

 ということでそのリザルトがこちら。


 Tier4:アサルトライフル

 Tier4:近接武器

 Tier5:近接武器

 Tier6:ショットガン

 Tier6:アサルトライフル


 これ以外にもTier7の強化服とビークル出ており、Tier8以下は最早戦力外なので省略。

 合計10個と豊作であったのだが、残念ながらTier3以上の高ランクはなし。

 やはりセンチュリオンは僕っ子の加護だったのかもしれない。


(とは言え、だ)


 流石に少々内容が偏り過ぎである。

 Tier4のアサルトライフルは同ランク帯の中では微妙かもしれないが、現状では十分に使える武器なのでアタリ。

 ゲームと違い両手で銃を撃てることを考えれば、有用な武器である可能性だってある。

 近接の二種はせめてどちらか片方が新種の武器であってほしかった。

 範囲攻撃が少ないのでミサイルランチャーかグレーネード、ロケットランチャー辺りが来てくれるのが理想だったのだが、出なかったものは仕方がない。


(近接は四も五も攻撃力に差がないのもなー)


 使い勝手は全く違うが、流石にどちらか片方で良かった。

 Tier3になれば制限は付くが性能が大幅に上昇するので、むしろ「欲しかった」まであるのだが、そうなるとその「制限」であるエネルギーパックがどうなるのかがわからない。

 高ランクの兵装は使用時に強化服に付属しているエネルギーパックからエネルギー供給を必要するものがあり、この辺りの判定がどうなっているのかが現状不明なのだ。

 そもそもゲームでは敵が使うエネルギーを解析して運用が可能となり、その技術を使った強化服ということでTier5の強化服を自動的に入手する。

 関連する兵装もこれ以降の入手だったので、もしかしたらエネルギーパック付きの強化服を手にするまでは、エネルギーを使用する武器は出てこない、という可能性もあるのではないか?

 どちらにせよ、現状はまだ試行数の少なさから考えても仕方のないことである。

 ということで残りを見ていこう。

 地味にありがたいのが強化服とビークル。

 身体能力の向上と純粋な性能強化のバイクはとても助かる。

 速度、耐久に加えて搭載可能武器が一つから二つに増えている点も見逃せない。

 その分大型化が進んでおり、回避能力や小回りが若干低下しているだろうが、速度と耐久性が大きく上昇しているので問題はない。

 また、大破したバイクなのだが……何故か直っていた。

 一日で復元するのか?

 それともリザルトで直るのかは不明だが、元に戻ってくれるのは大変ありがたい。

 他のビークルにもこれが適応されるのであれば、今後の運用が大きく変わるので、何らかの形で検証しておく必要がある。

 戦闘型ビークルに関しては弾薬がどうなるかも知っておきたい。

 一部のランクに似合わぬ強力な兵装もそうなのだが、ビークルの武器はミッション中にリロードができない。

 撃ち尽くせばそれで終わりの兵器の弾薬はどうなるか?

 これが回復するかしないかで大いに今後の戦略が変わる。

 それくらい強力なのがリロード不可の撃ち尽くし系の兵器なのである。

 最後に強化服を変更する。

 デザインはほとんどそのままだが、色が若干ではあるが濃くなった。

 これでセンチュリオンの反動に耐えることができればいいが……Tier7ではやはり心許ない。

 ちなみに結構ボロボロになっていた強化服は寝て起きたら綺麗に元通りになっていた。

 この件に関しては「霊装というのはそういうものです」で片づけられている。

 だったら他の連中の服はどうなっているのだろうか?

 そんなことを考えながら恒例となりつつある新武器の試し撃ちやらを行うべく、俺は少し疲れの残る体で射撃訓練場へと足を運んだ。




「やはり無理か……」


 この強化服ではセンチュリオンの反動を完全に受け止めるのは難しいようだ。

 やはり性能が劇的に上がるTier5以上の強化服が欲しくなる。

 エネルギー問題のないTier6もあるに越したことはないので、結局「目ぼしいものは全部欲しい」となる人の性。


(というかどう考えても武器種が偏り過ぎだ)


 もしかしたら出てこないのか、と疑いたくなる偏りようには少しばかり不安になる。

 ともあれ、今は試射の時間。

 次に出すのはTier4アサルトライフル。

 攻撃力は580と低いが、装弾数百発というマガジン火力が優秀な武器である。

 ただDPSを考慮すると「他でよくね?」となる悲しい武器。

 実際、この装弾数を支えるでかいドラムマガジンが武器重量とリロード時間を増加させており「だったら〇〇でいい」を加速させている。

 特徴があるのは良いことだと思うが、それを生かせる場面が少なすぎる悲しき武器なのだ。

 しかし、戦闘中でも自由に武器の切り替えができる今ならば使い道は十分ある。

 両手に持って使えばどの武器よりも長く弾幕を形成できる。

 さらに新バイクの武器スロットも利用すればリロードなしにおかわりも可能。

 これで効果がいまいちならばお手上げだが、弱い相手にはセンチュリオンよりも効率的なはずだ。


(お次はショットガンともう一つのアサルトライフルだが……)


 どちらも既所持のものを一回り強くした感じなので、使ってみたがこれといった感想がない。

 手数が増えたと思えば強化であることには変わりなく、事前にリロードすることさえ忘れていなければ、どちらも緊急時に使用できるので「使うことはない」ということはないはずだ。

 そんなわけで射撃武器の確認はこれで終了。

 次に近接武器の確認のため、射撃訓練場を出てミニ柱があるお隣へと移動する。

 相変わらず訓練場は人が少ない。


(もっとこう、ストイックに己を鍛えているイメージがあったんだがな)


 時間帯が悪いだけかもしれないが、射撃訓練場然り、この施設が他の英霊で埋まっていることなど見たことがない。

 人が少ないので使いたい放題と考えれば悪いことではなく、こうして待ち時間なしに利用できるのだから文句はないが、何と言うか世界観と合っていない気がするのだ。

 ともあれ、時間がもったいないので早速Tier4の近接武器を取り出す。

 見た目は鍔のない赤と黒の刀。

 僅かに反りのある刀身はやや長く、見た目からして「なんか強そう」と思えるビジュアルが人気の一振りである。

 エネルギーを使わない近接武器の中では間違いなく最高クラス。

 なのでこれを最後まで近接枠に入れている人も珍しくはない。

 攻撃力も4800と非常に優秀であり「地球の技術と侵略者の素材を組み合わせた傑作」という説明文も納得の武器である。

 分類上は「ブレード」という種類であり、近接武器の上位三つのうち二つはこのブレードとなっている。

 俺は標的の前に立つとブレードを上段に構え、標的に向かって振り下ろす。

 結果は切断成功。

 スッと通り抜けるように振り切られたブレードは、その攻撃力の高さをしっかりと示してくれた。


(Tier7ではできなかったが……攻撃力が上がるとこうも変わるか)


 これでTier4の確認は完了。

 次はTier5の近接武器なのだが……取り出そうとしたところで気が付いた。

 爆音が鳴るので届け出が必要だ。

 そんなわけで管理人に声をかけてからいざ実践。

 武器を取り出し、装着した腕を前に突き出すように構え、射出口を標的に添える。

 黒く武骨な鉄塊は、火薬と共にある咆哮。

 爆音、そして鋼鉄の杭に貫かれるミニ柱。

 そう、皆大好きパイルバンカーである。

 ちなみにムービーシーンでスコール1が飛行型を撃墜したのもこいつである。

 この癖強兵器で高速飛行する物体をバイクで飛んでぶち抜いているのだから「公式チート」とか言われるのも無理はない。

 攻撃力は4600と高いのだが、一度打つと冷却のために結構な時間再使用不能となる。

 インパクトは十分な兵装だが、この強化服のレベルで使うには少々反動が大きすぎると判明した。

「これ、前の強化服だったら肩が外れてたかもしれん」と大きく深呼吸して肩の具合を確かめる。

 あと使って判明したのだが、至近距離でのこの爆発音は普通に耳がおかしくなりそうになる。

 バトルスーツを着込んでいる状態ならいざ知らず、生身にヘルメットでの使用は極力控えた方が良さそうである。

 これにて新武器の確認は完了。

 少しばかり検証したいことができたが、それには流石に時間が足りない。

 戦闘詳細の方も知っておきたいので少し早いが作戦室へと向かう。

 目当ての人物がいれば良いが……いなかった場合は誰かに頼むか?

 それとも呼び出してもらうか?

 どちらにせよ、多分協力はしてくれると思うで、検証結果も楽しみである。

 上機嫌だがポーカーフェイスは崩さない。

 廊下で職員とすれ違うと笑顔で会釈をしてくれた。

 スコール1も英霊として名前が売れてきたのかもしれないが、それを演じる俺への負担が増していくのはどうにかならないものか。

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