第11話 朔斗の休日と撮影
入学から騒がしい怒涛の2週間を終え、やっと落ち着ける土曜日。明日は昼から部活に出なければならないので今日は自由に過ごそうと朔斗は思っていた。
「なんだかんだと朝に目が覚めてしまったな。もう少し寝る予定だったのに...」
(さて、今日は何をしようか。前世とは名前は違えど服もほとんど変わりがないんだよな。持っている服を見る限り朔斗は綺麗めな格好が好きだったらしいが俺はもう少しストリートっぽい格好も好きだからな。服でも見に行くか。)
シャワーを浴びて準備をし、服を見に行くことに。幸い都心に住んでいるため服を買う場所などには困らない。前世で言う原宿ら辺にまずは向かうことに。
(おぉ やっぱりこの辺もほとんど差がない。暮らしやすいと言えばそれまでだが、不思議なもんだな。)
そう思いながら通りを進んでいく。目当てのお店はもうすぐだ。しかしまぁ、この体は目立つ。先程からチラチラと視線がすごい。今日はゆっくりしたいので絡まれる前にさっさと店に入ろうと思ったところで...
「ねぇ!そこの君!」
(はぁ 言った矢先に... フラグ製造機か俺は)
無視して先に進もうとするが、肩を掴まれて振り向かされる。するとナンパ目当てなどでは無さそうな40代ほどのかっこいい女性だった。
「やっぱり!あなた最高の逸材じゃない!ねぇ、ちょっと撮影に協力してくれない? お礼するからさ!」
「はぁ... 撮影? 何の話ですか?」
「あ!ごめんね強引に声かけちゃって。実は...」
すごい熱量で説明されたので簡単に言うと、とあるお店の服の特集を雑誌で組んでおり、その撮影を今日しようとしていたのだがモデルが来ない。
このままでは撮影が出来ずに困っていたところ俺が通りかかり、何とかこの子を使って撮影をしようと思った。といったところ。
(聞いたところページ数もさほど多くはない。いくら朔斗と言えどもこれでそんなには目立たないだろう。モデル業界なんぞ特に女性が強い。だがいずれ目立つ事はしたいとは思っていた。まずは慣れる為にもこれは参加させてもらった方が美味しいな)
「わかりました。いいですよ。 今日は服買いに行こうと思っていただけですし空いてますので。」
「ほんと!? 助かるわぁ〜♪ じゃ、こっちに来て!お洋服着替えて少し髪の毛セットして早速始めちゃいましょ!」
と、俺が行く予定だったお店の近くのショップへ。服の系統としては似ている感じなので終わったらここで服を見ても良いと思った。そして他のスタッフの前に連れられた瞬間、全員が目を見開いてびっくりしていた。
「みんな!助っ人連れてきたわ!これで撮影が出来るわよ! この子なら少し整えれば大丈夫だから早く準備してあげてちょうだい!」
「あー、初めまして。全くの素人ですが、よろしくお願いします。」
と、挨拶するとようやく全員の電源が入り直した模様。
「ちょっ... こんな人どこで見つけたんですか?!」
「全然予定のモデルよりかっこいい子じゃない!」
「しかも礼儀正しい! 今日は楽しくなるわ♪
さ、こっちに来てください! さっそく着替えとセットを!」
あれよあれよと店員さんやスタッフさんに連れられて服を合わせられて髪の毛もセットされることに。
(なんだこのテンションの上がりよう。余程ろくでもない性格のやつが今回のモデルの予定だったのか?まぁ仕事ブチるような奴なら仕方ないか)
なんて考え事をしている間にセットも終了。読者モデルのような扱いのはずなのにとんでもない手際である。そして全員に絶賛されながら先程の女性の前へ連れていかれる。あの人がカメラマンだったようだ。
「これは... やはり私の目に狂いはなかったわ!あなた、名前は?」
「あぁ、そういえば自己紹介してませんでしたね。一条 朔斗です。 よろしくお願いします。」
「朔斗くんね♪ よく覚えておくわ! じゃ、早速撮影始めちゃいましょ! ポーズは最初はこちらが指定するけど慣れてきたら自分で動いてもいいから、まずは楽しんでちょうだい♪」
と、いうことで撮影開始。やってみると意外と悪くない。室内で撮ったり、服を着替えて外で撮ったりと。慣れていくうちに自分で写り方を考えれるようになりそれが楽しかった。さすがの適応力である。後、このショップの服がとにかく俺の好みでもあったので単純にテンションが上がったのも大きい。
「はぁ〜い!これで終了よ!お疲れ様みんな、そして朔斗くん!」
「お疲れ様でした。慣れてくると楽しいですね。ありがとうございました」
「途中から私も含めて全員びっくりしてたけどね... あなたほんとに初心者?今まで見たことは無いけど。」
「ほんとにそうですよ! こんな人を道端で引っ張ってくるなんて 今年一の運を使いきりましたね!」
「いや、それは言い過ぎですよ... あと普通に初心者です。スカウトみたいなのは全て断ってきたので。」
そう、朔斗はそりゃ目立つしモテるのでとにかく声がかかるがその中にはやはり芸能事務所のスカウトのようなものもあった。が、中学時代までの朔斗は特にそちら方面で目立ちたくもなかったので全て断っていたのだ。今回は朔斗が転生者という事もあり、撮られる事に慣れてみようと思ったり、やれる事はまずは試して楽しんでみようという思いからのイレギュラーみたいなものだ。
「やっぱり... そりゃ声かかるわよあなたなら。でも、なんでOKしてくれたのかしら今回は?」
「まぁ、今日暇でしたし。高校に入って気分が変わったのもありますし、単発の撮影くらいならいいかなと。」
「なるほどね... とにかく本当に助かったわ! ありがとうね! 今日はもうおしまいだから一旦着替えてらっしゃい? 私もお礼とか準備しておくから。」
「わかりました。」
一瞬カメラマンの目付きが変わったような気がしたが、朔斗を持ってしてもギリギリ気づくかといいうラインだったため気にしないことに。
「ということで、はいこれっ♪ ごめんなさいね。急な助っ人だから契約とかしていない以上お金では報酬を渡せないのよ。だからお店のスタッフさんと相談して朔斗くんに似合いそうな服を見繕ってあるわ。このお店の服はなかなか好みだったようだし♪」
「まじか... こんなにいいんですか? 確かにこの店の服はかなり好みでしたけど」
袋の中にはストリートっぽい服を始めに、数種類のセットが入っていた。店の値段帯を見る限り全部で軽く10万は超えるぞこれ...。 お金には困ってないが無料でこれだけの服が手に入るのは嬉しい。
「いいのよ! お店としても朔斗くんみたいなかっこいい子に着て貰えたら嬉しいわ!」
「本当はお金であげたかったんだけどね... でも急に頼んだのに楽しんで仕事してくれたのだもん。これくらい受け取ってちょうだい?」
「そうですか。分かりました。大切に着させてもらいます。 ありがとうございますっ!」
「あ、そうそう。連絡先交換しておいて貰えないかしら?雑誌が発売になったら連絡とかしたいし。」
「ん? まぁ...いいですよ。 交換しましょう。」
一瞬必要なものか?と止まったが、名刺だとこっちが連絡する必要があるし、そんなものかと割り切る。この辺の知識はいくら朔斗でも前世があろうとも芸能経験など無いので詳しくないのだ。
「ありがとっ♪ じゃ、気をつけて帰ってね!」
「お疲れ様でした。皆さんありがとうございました。」
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(side カメラマン)
「社長... なんで名刺渡さなかったんですか?」
「あの子今どこかに所属したいとかは考えてなさそうだったわ。変に名刺とか渡したら最悪今日の写真すら掲載しないでくれって言われかねないわよ。」
なんとこのカメラマン。モデル事務所の社長だったのだ。まだそこまでこの事務所は大きくないが、頭は切れるし、人を見る目もある。やり手の社長の前ではいくら朔斗でも芸能経験に基づく知識も無いため対応しきることは出来なかったようだ。正確に考えを読み取られている。
「いずれ絶対にあの子は声がかかって売れちゃうわ。その時に何とかしてうちに取り込むのよ。絶対一緒に仕事したいわ。あの子なら天下を取れる。」
軽い気持ちで受けた雑誌撮影。それがどんな影響をもたらすのか...
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ご覧頂きありがとうございます。
この回はいずれまた色々と繋がりますので。
今日はもう1話更新します。
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