第2話 邂逅

エレベーターを降りるだけで一苦労の高級マンションを出て、スマホのマップを見ながら外を歩いていく。 割と現実に沿ったゲームだったこともあり、ほとんど俺が知ってる東京と変わらなかった。


「あー、でもさすがに俺が知ってる店の名前とは微妙に違うな」


某ハンバーガーチェーン店がワックになってたり 牛丼チェーンが新野屋だったりと。 まぁ、そこはいいか。


どうもこの辺は新宿近辺を想像してくれればいいかもしれない。そしてしばらく散歩を続けて繁華街を抜け、少し裏道のようなところに入るとなんともベタな絡まれ方をしている2人組を見つけた。



「おいおい〜、ツレがいるから無理って言うからどんなのが来るかと思えば、よりによってそんなだせぇやつが来るとは思わねぇだろねぇちゃん〜?」


「絶対俺たちと来た方が楽しいからそんなのほっときなよ〜?」


(まぁ、春休み期間とはいえこんな分かりやすいチンピラみたいなやつ歩いてるか? さすがはエロゲの世界観というところか...)


絡まれているのは男女2人組。 こちらからは後ろ姿しか見えないが、水色のロングウルフのバンギャっぽい格好をした女の子と 黒髪の男の子のようだ。背格好を見る感じ多分俺と同じくらいの歳だな...。


絡んでるのは大学生くらいの2人組の男のようだ。韓国っぽい黒髪センター分けの男と、ごつい体つきの黒髪の剃りこみが入った短髪褐色の男。

声掛け担当と威圧担当ってところか?


どうもこの体に入ってからは俺の意識と朔斗の意識が融合してるらしく怖いもの知らずの万能朔斗と適度な倫理観の元の俺。 そういった人格になったようだ。 ということでビビらず介入することに。


「こんな真昼間からアホみたいなナンパしてるな。目障りだからさっさと消えろ。」


「あ? 誰だテメェいきなり出てきて。 随分な口の利き方してくれんな優男くんよぉ? 」


「もしかしてこのイケてる子の知り合い? カッコつけて止めに来てるならやめときな? このお兄さんに勝てるわけないじゃん?」


「いや、どっちも知らねぇし後ろから顔なんか見えるかよバカが。 通りがかっただけだが見苦しいから消えろと言ってるんだ」


当然のようにこっちに標的が移ったところで2人組の横につくと、その二人を見て俺は顔には出さずに驚いた。


絡まれていたのは、原作主人公の渡辺と、ヒロインの1人 早乙女 柚月さおとめ ゆづきだった。


柚月は簡単に言えばダウナー系のギャルだ。 水色の外ハネロングウルフにスレンダーな体つき。眠たげな目が特徴の色素薄め系。他人に興味が薄く口数は基本少ないが、心を許せばある程度話すようになり惚れれば一気に重たくなる。 主人公とは中学時代に好きな曲が一緒だったことから仲良くなったのがきっかけで話すようになるのだ。


(まさか絡まれてるのがこいつらとは... ただの散歩のつもりが、なんの偶然だ...)


「... いいよ 余計なことしないで。」


まぁ、予想通りの反応ではある。


「そう言われてもな。後ろの男はビビって使い物にならないし、か弱い女子の君はどうするんだ?

どの道俺も絡んでしまったからな。 勝手にさせてもらう。」


「いや... 僕は別に...」


(こいつ... プレイヤーがいないとどうなるかってのは分からなかったが、ここまでヘタレるもんか? まぁ、この場は仕方ないとしよう)


「とりあえず俺は余計な問答は嫌いなんだ。さっさと目の前から消えるか、ここでボコボコにされるか、 選べ。」


(おぉ 元の俺の話し方とは違うがしっくり来るし思考がクリアだ。 そもそも自分に自信がありすぎるんだろうな朔斗は)


そんなことを考えながら返答を待っていると当然のように殴りかかってきた。


「勝手に出てきて随分なこといってくれんなぁ!おらァァ! 」


「2人相手に勝てると思うなよ!」


(いや、遅っ この体... さすがのスペックだな)


殴りかかってきた手前のごついのをハイキック1発で気絶、その後しれっとその後ろの死角から手を出そうとしてたセンター分けの腕をとり思いっきり捻りあげる。


「ガッ?!」


「ん...? ギャァァァァァ!!!」


「ほら、このまま腕が使えなくなるか、ここからそのゴミを連れて消えるか選べ」


「わ、わ、わかったよ! 悪かった! だから離してくれよぉ!!」


そもそもこんなイベントは原作にはなかったということもあって、そのまま解放してやると 意外とでかいのに肩を貸してさっさと消えていった。


「さてと、大丈夫か? とりあえずここを離れるぞ。 ついてこい」


「... わかった」


「ま、まってよ!」


2人に声をかけたあと俺が歩き出すと、意外と素直に着いてきた。そのまま裏道を出て近くのコンビニの前まで歩いていくことに。


「まぁ、あんな形になったが何も無くてよかったな。 だがなんだってあんな裏道にいたんだ。」


「...まずは助けてくれてありがとう。 さっきはあぁ言ったけど助かった。 私はあんまりこの辺に詳しくは無いのだけど、映画を見た帰りで。ここを通っていくと早く大通りに出れるってことで それで歩いてて、渡辺君が親からの電話が来たって少し離れた隙に...」


と、男の方を向きながら事情を説明する柚月。

すると


「ひ、昼間だからまさかあんなことになるとは思わなかったんだ!!! 仕方ないだろ!」


(はぁ... こいつまじか? まずは自分の保身かよ... 思ったより自己中のあほなのか? いや、まぁまだ気にする程でもないか。 ビビってただけということにしておこう一応。)


「そうか、まぁ事情はわかった。 なるべく人通りのあるところを通って気をつけて帰ることを勧める。 そういえば自己紹介をしてなかったな。 俺は一条 朔斗。 春から白城高校に通う予定の高校一年生だ」


「...まさかの同い年だなんて。 早乙女 柚月。

同じく白城高校に行く予定の高一。」


「僕らと同じとこに通うのか。 同じく1年の渡辺 辰巳です。

よ、よろしくね...」


「同じ高校なのか 縁があればよろしくな。ここのコンビニは大通り沿いだし、この先は大丈夫そうか? それじゃ俺はこれで」


とりあえず俺はめんどくさいことになる前に2人から離れることにした。


「.....ありがと」


「う、うん またね...」


(一条...くんね)


(な、なんだよあれ... ぼくだって本当は何とかできたはずだ... きっと...)


「はぁ... 柚月の方はともかくとしても あれが原作主人公ねぇ だいぶ先が思いやられるな...」



なんとも言えない原作主人公との初邂逅であったのだった


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