BURNOUT DYSTOPIA

物狂響響

第1話 試験

「俺は最強のディストピアハンターになって世界を救う救世主なんだ!!」

金髪の髪を風になびかせ制服のブレザーをマントのように背中に腕を通さずに膝を段差に立て胸を張る

「中学2年生にもなってそんな事、恥ずかしいと思わないんか?」

灰色の髪色をした肩にかかる程度の長い髪をなびかせる男が金髪に呆れたように声をかける

「俺は厨二病を拗らせながら大人になって!楽しく世界救ってイージーモードだ!」

さらに胸をはるとその僅かな膨らみに灰色の男は目を逸らす。

「そんな簡単なもんかね、第1試験でさよならだろ。」

横に手を振って金髪に背中を向け歩き出す。

「ちょ、ちょっと待ってよ!」

続けて床に置いてあるバッグをとって肩にかけると灰色の男に追いつこうと走り出した。


「ディストピアハンター」

突如発生した謎の無人島「Z」に出現した頭脳が高く世界を危険に晒す知的生命体「存在Z」を駆逐し安全を保つ保安警部戦闘員、それがディストピアハンター。

「存在Z」は電力もなく、何も無い状態でなぜ文明を発展させたのか。

それは地下深くに漲るマントルを吸収し動力を確保。発電所を建設し文明を発展させてきた。マントルを吸収され続けると、地球は重力を度々失って行き、生活は愚か、生存すら困難になって行く。


─────試験当日・試験会場


「やっと着いたぜ!!てか、なんでお前きたん?」

金髪が後ろを歩く灰色の男に首を傾げながら方向を変え、疑問を口に出す

「お前一人なのは危険すぎる、俺が付き添いだ」

「保護者かよ。まぁ、お前がいたら安心だけどな!」

頭の後ろに両腕を回し歩き出す

その言葉を聞いた灰色の男は頬を少し赤らめ床に視線を向けながら後を追うように歩く


大きな入口のゲートを抜けると、そこにはひとつの教卓に下は芝生。

所々にネジ打ちがされたような跡と共に細長い長方形の通気口のような穴が複数個存在している。

試験者全員がその異質な光景に困惑の表情や独り言を発しわたわたとした中、金髪と灰色は落ち着き金髪のほうはニヤッとした楽しげな表情を浮かべる。

すると、コツコツと靴の音を鳴らしながら着崩した軍服のような服の上に黒のスカーフを身にまとった髭が生えた男が教卓の前に立ち演説を始める

「あー、あー、」

髭の生えた男はハウリングのように響く音に目を閉じて嫌な表情をし耳を塞いだ。

その音を聞いて後ろにいた試験者は気がつくと、後ろにあった入場口が力強く閉まろうとする

すると一人の男が走ってくる。


「待って!!待ってください!!」

涙目になりながら訴える、その声は届かないことを察し更に走り続ける。

「おばあちゃん!ごめん、こんな所で!」

何とか身を押し込もうとする

すると、扉が急に速度を落とし待っているかのように髭の男が手招きをする

「!!」

目に光を取り戻した男が走る速度を更に早くし、入場口に近づいたあたりで歩きに変わる

「大丈夫です!一緒に試験を受けましょう!」

一人の女がその男を元気づけるために手を前に出し笑顔を見せる

するとその男は恋に落ちたようだ、その光景を見ると金髪は明るい表情になり、気分が高ぶった

(やっぱりみんなが平等に扱われ、平等な権利を持つ!)

すると灰色の男が察したように右足を前に出し、叫ぶ

「!?待て!!止まるんだ!」

周りがその声に疑問を抱いた

「なんでだよ!平等に扱われるなら、待ってあげるのは当然だろ!?」

「そうだよ!私たちは時間を平等に扱い、権利を平等に扱う!」

2人の男女が訴えるとその声を振り払うかのように声を荒らげる

「お前ら正気か!?本当に平等に扱うなら!」

皆がその瞬間に気がついた

「「僕らの時間を奪っている」」

「あいつは、俺たちの平等な時間を奪ったんだ」

するとその男が扉にさしかかる、手を引かれ女に右手を差し出し体がちょうどド真ん中に体が重なったあたりで、強く音を立てながら扉が閉まった。

ブチブチと肉を引き裂く音とバキバキと骨を砕く音が場内に鳴り響いた

手を引いていた女の顔が笑顔からみるみるうちに目から光を失っていく

血が女の顔にへばりつき、その場で倒れ込む

前には首がひきちぎれ、頭の半分を失い、頭蓋骨から溢れ出た脳みそをぐちゃぐちゃと汚い音を鳴らしながら転がり込むその男の頭があった。


「試験番号1000番。死亡」


大きく放送が鳴り響く

灰色は目を見開き、冷や汗を滝のように落とした、金髪に目を向けると、その光景に灰色は更に目を見開く

「これが!本物の平等か!!!」

高笑いをし始める

その光景に灰色の他に多くの試験者が絶望の表情を向けた

「嘘だろ……」「あれを見てまだ平等と!?」「ある意味平等なんじゃないか?」

「狂ってる奴は放っておけ!!」


試験監督の髭が生えた男が口を開く

「俺は第一隊隊長「シンゼン・シリウス」この試験の監督責任者となった」


シンゼン・シリウス。

その名を知らないものはいないほどの実力者。

Zに1人で潜り込み1週間を生き延び帰ってきた伝説の男

彼がいなければ対処法も隊全体の士気も上がっていなかったであろう功労者である。


「申し訳ないが、ここではディストピアハンタールールに則って進めていく。遅刻なんて以ての外。許されるわけなく即刻死刑だ」

舐め腐った表情で見下す

「お前らを試させてもらったが、残念だ。見込みのあるものは2人のみ」

すると目を向け金髪と灰色を指名し

「名乗れ、権利をやる」

金髪がはいはい!と手を高々に挙げ先を越す

「はいそこの金髪!名乗ってねぇ」

めんどくさそうに指をさして名乗ることを許した

「バーンアウト・ディストピアだ!」

「続いて俺はフォーリー・リリーフ」

シリウスはニッコリと笑った

「2人ともいい名前だ!第一試験合格!先へ進め。」

えっ?

リリーフが声を上げる間もなくディストピアはラッキー!と声を上げスキップして先へ進む

「待てよ!」またもやリリーフは追いつくように走って先の部屋に進んだ


「シリウス試験監督!なぜあのものは合格なのでしょうか!」

「リリーフ試験者の方は分かります!ですがディストピアの方は異常者です!」

するとシリウスが声を荒らげた


「黙れ!!!!」


試験会場全体が大きく揺れ、ザワザワとした空間を一瞬で無音へと変えた

「俺がかっこいいと思った名前だからだ!!」

その言い分に他の試験者はポカン状態、頭が理解を拒み真っ白の光景に塗り替えていた。

「理解出来ません!!」「なぜそんな気分で!」

するとシリウスはため息をつきながら目を閉じて残念そうに頭を振りながら言った

「せっかく笑いを取ろうとしたのに、まさか本当に先へ進めた理由をわかっていなかったとは……」


『残念だ』


その声とともに、肉が潰れ水が地面を弾き着水する音が全体に響き、一瞬で静寂が訪れた


「おい、やっぱりおかしいだろ」

「なんで?」「なんでって、」

先程の進めと光景に疑問と違和感を抱いたリリーフがディストピアへと声をかけた

「人の命。世界を救う団体がなんで人を殺す!?」

「試験だからだよ」

「平等平等と言いながらひとつの命を無駄に潰したんだぞ!?」

「試験だからね」

リリーフは嘘だろ?と涙ぐみながら訴える

(ディストピアはなんでこんなにあっさりとした返しをする?)

すると顔が反対方向を向きわざと表情を隠していたことに気がつく

「お前!顔見せろ!!」

無理やりリリーフがディストピアの顔を持ち自分の方へ向けると

「っ!……お前……」

ディストピアは涙を静かに流していた。その直後にリリーフに抱きつく

「ごめん、やっぱりこんなのおかしいよ」

「あぁ、そうだな。」


「この不平等を。暴いてやる」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る