私達は片思い。

メパーラル

大好きなあなたへ

「私のこと、好き?」

「うん、大好き。」


そう、私はいつだって水葉が好き。


もう1年くらい前かな。私は水葉の気持ちを聴いた。

私達はその日、ただのクラスメイトを辞めた。

それから2人で、恋人の楽しさを知った


私達はお互いに相手のことが大好きで、

いつでも相手のことを考えて、愛は深まる一方で。


……きっと、私達はずっとそうなんだと思う。

愛し合う2人。これまでも、これから先も


……でもね、きっと水葉と私の気持ちは一緒なんかじゃない。


付き合った私達は色んなところにデートに行った。


2人で水族館に行った。

水葉が魚の群れを見ている間、私は大きなサメを見ていた。

2人で山に登った。

水葉が星座を探す間、私は流れ星を探していた。

2人で海を見に行った。

水葉が赤く染まる海に感動する間、私は沈む夕日に心を奪われていた。


全部水葉との大切な記憶。

大好きな人との幸せな日々。

この上なく幸福だったと思う。


だけどね、私気づいちゃったの。


どこに行っても、私と水葉はずっと同じ方向を向いていた。

でも、私と水葉の見ている景色はいつも違っていた。


水葉はずっと今を見ていた。私はずっと未来を憂いていた。

同じ空を見上げても、私達は同じ世界を見ていなかった。


過ごす時間が増えるほど、水葉が遠ざかっていく。

愛し合っているはずなのに。

時間も場所も、悲しみだって、分かち合っていたはずなのに。


「ねぇ、水葉?」

「んー?どうしたの?」


一緒にいる時間を増やしても、2人の傷は開いていくだけ。

そう、私達はきっと、一緒には居られない2人。


「別れよう。私達。」



───ちょっとだけね、ため息がこぼれちゃった。

だって、納得できちゃったんだもん。

風美ちゃんに振られること、なんとなく想像してたから。


わたしは風美ちゃんが好き。風美ちゃんもわたしが好き。

付き合ったときには嬉しかった。

同じ気持ちだったんだって、舞い上がっていた。


でもね、少しずつモヤモヤが溜まっていってた。

変な話だよね。隣に居るのに、置いていかれてるなんて。


わたしが立ち止まっていても、風美はどんどん進んでいく。

離れていく距離に、最初は目を背けていた。


気の所為だって言い聞かせてた。

ちょっとだけ速く歩こうとしてみてた。


……気づいたときには、付き合ったときより遠くにいた。


知れば知るほど遠ざかっていく。

愛せば愛すほど離れていく。


風美ちゃん。大好きだよ。

わたしのこと。大好きだよね?


問いかけても、あなたは振り返って軽く頷くだけ。

すぐに前を向いて、私から離れていってしまう。

本当は一緒に立ち止まってほしい。もっと隣を歩いてほしい。

なんて、きっと風美ちゃんには関係ないよね。


大好きだよ。一緒にいたいよ。でも、もうわたしもしんどいのかも。

……ごめんね。風美ちゃん。


「……うん。わたしも同じこと思ってた。」


もう、わたしを置いていって。

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