おにぎりぴより2〜桜文鳥のゆらゆら日記〜

宮野入翠珠

第1話 別れと出会い

 今年の夏に竹が虹の橋へと羽ばたいていきました。

 まだ四歳。

 あまりにも早いお別れに、何で? どうして?  この言葉しか出てきませんでした。


 松と梅も竹がいなくなってから大人しくて。

 にぎやかだった放鳥時間は静かな時間になり、松は私に、梅は家族に、竹のいない寂しさを埋めるように寄り添う生活が始まりました。


 それから一ヶ月半が過ぎた頃、私の心にある思いが浮かび、日に日に強くなります。


 文鳥のヒナを育てたい……


 家族に相談すると、ペットショップに見に行こうと言われてお店に向かいました。


 カラフルなセキセイインコのヒナが身を寄せてお昼寝タイム。

 おっとりとした雰囲気のオカメインコのヒナを目にしてほっこりさせてもらい、コザクラインコのヒナが翼を広げて連れてってと猛アピールする姿に、懐かしさを感じながら文鳥のヒナをさがすも見当たらず。


 店員さんに尋ねると、文鳥の繁殖シーズンが始まったばかりでヒナが品薄状態らしく、なかなか入荷しないとのこと。


 時期尚早だったかとその日は帰宅しました。


 それでもなぜか諦めがつかず、家族に相談すると、ヒナが入荷したら連絡がほしいとショップに相談してみるかと言ってくれました。


 後日、家族はショップに行き、必ず買うとは言えないが、ヒナが入荷したら見せてほしいと交渉し、入荷したら連絡をくれることになりました。


 そして二週間後、待ちに待った連絡がありました。

 ヒナはすでに展示されており、私たちが来る前に売れてしまってもご了承くださいとの言葉を受けて慌ててショップへ。


 もう、売れてしまったのかな? 大丈夫かなとドキドキしながら入店します。

 ヒナがいるケースの前に立つと、中には縦に細長く裂かれたティッシュがあるだけでヒナの姿は見当たりません。


 私は無意識に竹の名前を呟くと、隅っこのティッシュが動き、モソモソとケースの真ん中まで移動するヒナ。

 しかしティッシュに阻まれ姿を見ることができません。

 いいタイミングで店員さんが来たので、ヒナの姿が見えないと伝えるとティッシュを取ってくれてご対面。


 桜文鳥と白文鳥が一羽ずついました。

 突然ティッシュを取られて驚いたのか、ケースの真ん中にいたヒナは素早く後退り、白文鳥と身を寄せています。


 生後二週間くらいでしょうか。

 筆毛の先がほぐれて少しだけ羽が出ています。

 一目見ただけで、決まりました。

 この子をうちの子にすると。

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