第2話 電車

俺は今日もまたあの電車に乗る。

いつものように車窓から見える海を眺め、意識をあの子に向ける。いつからだろうか。俺があの子に気持ちを寄せるようになったのは。

海は綺麗だと思う。よくドラマとかで告白のシーンに使われるくらい、その綺麗さは世間で広く伝わっている。だが、毎日見ていると新鮮さはなく、空などの風景と一体化してしまうのだ。

なのにあの子は違っていた。電車に揺られながら海を眺め、暖かい表情をしているのだ。そんなあの子を見るようになり、とうとう俺はあの子に話しかけることを決めた。それから俺は毎日考えた。名前を聞くか、高校を聞くか、連絡先を聞くか。でも考えすぎてしまって結局

「海は好き?」という変な話しかけ方になってしまった。あの子は話かけられて少し驚いたのかその大きな目をさらに見開き、頬を赤く染めながら「うん、好き。」と答えてきた。

それから、俺は毎日あの子と話すようになった。たまに、あの子の方からも話しかけてくるようにもなった。俺はこの毎日をとても気に入ってしまった。だから、この生活を無くしたくないと思ったんだ。だけどもっとあの子のことを知りたい。もっと色んな表情を見てみたい。そう思ってしまったのだ。

そして、今日は勝負の日。もしかしたらもう二度とあの子と話すことは出来ないかもしれない。でもいいんだ。俺は後悔しない。だって、目の前にいるあの子はずっと俺のことを見つめているのだから。


俺は電車が好きだ。

あの子と一緒にいれるこの電車が。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る