現代の世界に魔獣が現れさあ大変だが俺はなんとか生きてます
みなと劉
第1話
朝、目を覚ます。
カーテンの隙間から差し込む光が、部屋の白い壁にやわらかく広がっていた。
ゆっくりとベッドから起き上がり、キッチンへ向かう。
冷蔵庫を開け、卵とベーコンを取り出す。フライパンに油をひき、じゅっと音を立てて焼きはじめる。
香ばしい匂いが部屋に満ち、腹が鳴った。
トーストを焼きながら、コーヒーを淹れる。
食卓に並べて、静かに「いただきます」と呟く。
一口、二口。今日もいつもと同じ朝――のはずだった。
食べ終わると、片付けを済ませ、新聞を手に取る。
見出しには「近郊で謎の獣被害続発」の文字。眉をひそめながらも、どこか他人事のように読み流した。
時計の針が八時を指す。
鞄を手にして、玄関を出る。
家から十メートルほど歩いたところで――空気が揺れた。
突如として、黒い影が路地から飛び出す。
犬のようでいて、犬ではない。
赤い瞳を光らせたハウンドが、こちらを睨みつけていた。
心臓が跳ねる。
しかし体は勝手に動いていた。
構えを取り、右足で地を蹴る。
体術の型どおりに踏み込み、肘で一撃を叩き込む。
鈍い衝撃とともに、ハウンドがのけぞった。
確かな手応え。だが、それで終わりではなかった。
唸り声とともに、鋭い爪が襲いかかる。
避けきれず、左肩に浅く傷が走った。血の匂いが鼻を刺す。
「くっ……!」
痛みに顔をしかめながら、再び構える。
呼吸を整え、一歩踏み込み、拳を突き出す。
正確に急所をとらえた一撃が、ハウンドの胸を貫いた。
黒い霧が立ちのぼり、獣の姿がゆっくりと消えていく。
静寂が戻る。
その瞬間、頭の奥で声が響いた。
――レベルが2上がりました。
手のひらを見る。かすかに光が瞬き、すぐに消えた。
朝の通勤路に、ただ一人、俺だけが立っていた。
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