思いやれない言葉たちは。
ぱぷりか
第1話
痩せすぎ注意、そう書いた看板を見て凪は隅っこを蹴った。
ネオンが目を覚ましたように輝き始める夜の海。色とりどりの電飾が口々にうたう。全て人を思いやらない言葉だと、1人気づいて吐いた。目の前を覆う鈍痛がゆっくりと喉元を流れ、食道を焼いて、コンクリートを白濁したもので汚した。毎週末、大阪・難波の片隅で嘔吐するのはやめようと、こうなってからいつも思い、落胆する。
ハイボール、生ビール、レモンサワー。
全部ジョッキで提供されるのに違う飲み物だ。体内でぐるぐるとミキシングされれば、もやは嘔吐するしかない。
手の甲で口を拭うと、ぎらりと光る跡が見えた。アスファルトの隆起で尻が痒くなる。隣で座るバッグから手探りでスマホを取り出すと、時刻はすでに深夜三時を回っていた。
凪は這うように立ち上がると、身体を低く揺らしながら足を前に出した。ゾンビを彷彿させる動きにここがUSJなら良かったのにと、そんなことを考えられるぐらいの余裕は出てきたことに自然と、口角が上がっていた。
今日、いや昨日飲んでいた相手がこんな姿を見たらどんな顔をするだろう。どんな顔もしないか。結論とともに吐いた息は、唾液とアルコールで生焼けのスルメのように臭く、色気のないものだった。
こうして堅山凪の三十回目の生誕祭が始まりを告げるのだった。
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