双葉莉奈と告白と
ノリが軽い!?
まずは、それとなーく二人きりになる時間を作った。邪魔や茶々入れは許さない。
奈緒と真奈斗は部屋に閉じ込めてきた。念には念を、入り口に荷物を積んでしばらくは出れないようにした。
メメさんや星宮千暁は既に帰宅中。ママは放心状態だからほっといて大丈夫だろう。
「結局、千暁。真奈斗に触れもしなかったな。助かったけど、また別な問題が発生した気がする。叔母さん、千暁に惚れてたくさいぞ」
告白するための下準備を始める。僕はそれとなーく、恋愛トークを大樹へ振った。
「大樹ってさ~。好きな人っているの~?」
直球。我ながら直球である。だって、それしか思いつかなかったのだ。話運びが下手くそだとよく友人にも言われる。
「いるけど? それがどうしたって、なんで急に地球の終わりみたいな表情になってんだ?」
出鼻を挫かれるとはまさにこのことだろう。いるって、一体誰のことを指しているのか。
真奈斗だろうか。大樹は先日、真奈斗を女装させようとしたらしい。まさか、大樹はそっち方面なのだろうか。
それとも、水谷メメさん?
彼女はミステリアスな雰囲気で、一部の男子からは推されているらしい。さらに、僕には持ってない二つのスイカを持っている。
彼は気づいてないかもしれないが、大樹のベット下にアレな雑誌を隠してあるのは知っている。しかも、よりにもよって僕には持ってない二つのスイカの持ち主ばっかりだった。
ま、まさか。水谷メメさんが泥棒猫だった……?
「そ、それって~……だ、誰?」
「莉奈に決まっているだろ。同人誌描くぐらいなんだから。つい最近自覚したんだけどな」
「えっ、よっかったぁ~。まさか僕以外にも好きな人が居るのかと~」
「無い無い。付き合いたい人も、莉奈ぐらいしか居ないしな」
「えっ?」
勝機を逃すな。掴み取れ! ここまで言葉を引き出せば、あとは押しまくれば……!
「ちなみに僕、フリーだよ~? 彼氏いないよ~?」
「……ああ。じゃあ俺たち付き合ってみる?」
「えっ?」
『俺たち付き合ってみる?』と大樹ははっきりそう言った。僕の解釈が正しければ……
「~っ!? へっ、えっ!?」
「どうした莉奈? 銅像のように固まってるけど」
「ノリが軽いよ!?『うん~分かった』みたいなテンションじゃん!? プロポーズ今ここでする普通!?」
「先にそのテンションで言ってきたの莉奈じゃないか」
「それは、そうなんだけどさ~」
「まあ、俺なりに悩んだぞ? いとこ同士付き合うことになる弊害とか」
「そんなの愛の前には関係ないよ~!」
「付き合うとして、俺たちの共通のじいちゃん、ばあちゃんにどう説明するよ。親にもなんて言えば……」
あ、おばあちゃんは大丈夫として、おじいさんはそういうのに厳しそう……
「……ノープラン!」
「おおー、莉奈らしい無鉄砲で無計画。無策かぁ。まあ、実際俺も考えてるわけではないけども」
でもそうか。いとこ同士付き合ってるのがバレたら大変なことになる。友達や家族に関係を悟られないようにしないといけない。
◇
「じゃあ、これからはお付き合いするという方向で」
「やったあ~! 僕、大樹と付き合えるんだぁ~! 夢じゃないよね~!」
「でも、家族には内緒な? いとこ同士付き合い始めたって知られたら、今は面倒だから」
「は~い!」
そんなこんなで僕と大樹は正式に付き合うこととなった。
「僕たちは危ない領域に足を踏み込んでいる。共犯だね」
大樹はしばらく考え込んだ後、『共犯か……そうだな』と呟いた。秘密な関係、誰にも悟られてはいけない恋愛。僕は漫画みたいな展開にワクワクしていた。
「それでさ~。大樹は僕のこと、どうして好きになったのさ~? 教えてほしいな~!」
僕は過去最高に浮かれていた。一大プロジェクトを大成功にまとめた会社の人達も、シチュエーションが違えど僕と同じ気持ちになっているのだろうか?
「まず、莉奈はかわいい。性格は少なくとも地雷らしい地雷は見当たらない」
「えへへ~!」
「さらに、俺が苦手な虫を逃がしてくれるし、美味しい料理を作ってくれたりする」
「あ~……」
僕の後輩、恋愛でよく相談している水谷メメさんの受け売り。『人は、無意識に自分にないものを相手に求める』ってのは本当らしい。
思えば僕も、自分には無い筋肉を大樹に求めたりしている。案外、人を好きになる理由は単純なのかもしれない。
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