第2話 猛スピード、猪突猛進、イノシシストレートボール
《来年辺り、プロに入ってくるはずの親友ですかね。オレの1番のライバルですから。プロの1番大きな舞台で戦ってみたいですね。》
「な、なんだよこの動画!!」
親友である
「誰に電話してるの?」
スマホを自分の耳に当てている猛進に、
「決まってんだろ? あのバカにだよ。」
そう猛進が答えた瞬間、純が電話に出る。
《よっ。我ライバルの親友よ。やっとかけてきたか。》
「あのインタビューはどういうわけだ?
誰が来年プロ入りするって言ったよ。」
《いやね、お前の才能をそのまま腐らせるのはもったいないと思ってね。
親友なりの思いやりだよ。お・も・い・や・り。》
呑気な声でぬかす親友に、猛進の苛立ちはさらに大きくなる。
「お前が今年のプロ試験受ける時に、何度も言ったろうがぁ!!
オレはプロになんか興味ないってな。
そもそも、オレがボウリングを始めたきっかけも、お前に対する対抗心だけで、他の奴らとの試合なんて毛ほども興味ねぇんだよ!!」
《だ〜か〜ら〜。その対抗心だけで、プロまで来いって言ってんだよ。
オレたちの7年間の熱い
それに、プロの世界には、オレとの
「なにが“プロ世界には”だ。
昨日なったばっかりで、そっちの世界のことなんか何も知らないくせに、かっこつけんなよな。」
猛進から返ってきた言葉に、純は楽しそうに笑う。
《相変わらず、投げるボールと違って、性格はひねくれてるねぇ。うり坊。》
「その呼び方やめろよ、蛇野郎が。」
《おっと。そろそろ雑誌の取材があるから。またな、うり坊。》
そう言って純は電話を切る。
「おい、ちょっと待て!!
まだ話は終わってないぞ!!」
電話の切れたスマホに向かって猛進は叫ぶが、もちろんその声は純には届かない。
「お前の兄貴はなんなんだぁ!!」
そう発散できなかった怒りを、妹の応花にぶつける。
「今ボウリング界で1番話題の、自慢の兄です。」
成長途中の小さな胸を張って、応花は答える。
そんな応花の姿を見て、(この
そんな猛進の背中に、応花が声をかける。
「うり
応花の方へ振り返ると、猛進は不機嫌な想いを声にこめて答える。
「ストレス発散。」
猛進の言葉に、応花はパーッと明るい笑顔を見せて「ウチも行く!!」と叫ぶ。
*
猛進と応花がやってきたのは、近くのボウリング場だった。
ボウリング場の名前は“桜のつぼみ”。
猛進と純が小さい時から通っているボウリング場である。
このボウリング場の7番レーンが、猛進と純のお気に入りのレーンで、このレーンが空いている時はいつもこのレーンを使っている。
今日もその7番レーンで、いつも使っている白桃色のハウスボールを左手に構えて、レーンの先に綺麗に並んでいる10本の白いピンを猛進は見つめる。
しっかりと狙いを定めると、猛進はテンポのいい助走をつけて、左腕を大きく上げると体全体を使いボールに全ての力を流し、放つ!!
放たれたボールは猛スピードで、レーンの真ん中を綺麗な直線で走る。
8ポンドの軽いボールとはいえ、ボウリングの玉とは思えないほどの速いスピードで、白桃色のボールは綺麗にピンの真ん中を突っ切ると、猛スピードによる強い威力に
その結果、見事10本すべてのピンを倒してみせる。
「やっぱり、いつ見ても強力よねぇ。
猛スピード、猪突猛進、イノシシストレートボール。」
そう長たらしい技名を口にしながら、応花が猛進のボールを褒める。
満足そうに頷きながらアプローチを出る猛進の肩に、誰かの手が回ってくる。
猛進の目線は、手を回してきた自分とさほど変わらない低身長の金髪男子に向く。
金髪男子は両耳につけたドクロのイヤリングを揺らしながら猛進の方へ目線を向けると、笑みを見せる。
「自分、おもろいボール投げるなぁ。
あんな速いストレート投げる奴、初めて見たわ。なぁ、ワイと1ゲーム、勝負せんか?」
いきなり勝負を挑んできた関西弁の金髪男子を、猛進は不機嫌な目で見つめる。
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それでは、また次回お会いしましょう。
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