第十一話:三つ巴の乱戦と、水の槍
神社の地下水脈は、突如として三つ巴の戦場と化した。
地下の清浄な水流は、
「
「久しぶりだな、水龍の古い臣下ども」
「止めろ!」
美咲の反撃
美咲は、その光景を直視した。穢れによって命を奪われ、道具と化す人々の姿。その悲惨さが、美咲の心の底にあった『日常への執着』を、『世界への危機感』へと明確に変えた。
(憎しみじゃない、絶望でもない。穢れを許さないという意志!)
美咲は、装束の袖を水脈に浸した。彼女の心は、
「細糸(さいし)、展開!」
美咲の指先から、滝壺の訓練で目指した髪の毛よりも細い水流が、無数に、しかし正確に射出された。清浄な水の糸は、
「ほう?力を制御し始めたか。だが、その程度の力で、我の穢れの支配は止められん!」
その隙を見逃さず、美咲はすべての水流を一本の水の槍へと収束させ、辰砂めがけて放った。
水の槍は、清浄な意志を纏い、穢れの瘴気を切り裂いて
「ぐっ…!」
辰砂は、咄嗟に両手を交差させ、黒い瘴気で防御したが、水の槍は彼の胸元を掠め、装束を切り裂いた。
九ノ会の動きと辰砂の狙い
「無様な姿だな、
バチィッ!
最後の札が貼られた瞬間、清浄な地下水脈全体が、青白い禁呪の光に包まれ、水流は硬化し、完全に封鎖された。
「成功だ、
美咲は、水脈が封鎖された瞬間に、全身から力が抜け、心臓を鷲掴みにされたような感覚に襲われた。体表の水の膜は霧散し、装束の白と青のラインが、力を失ってくすむ。
「無駄だ、
「水は清浄ではあるが、硬化すれば、それはただの器だ!」
穢れは、禁呪で硬化された水脈の表面から内部へと染み込み始めた。
美咲は、力の消失と、目の前で自分の拠り所が穢れていく光景に、再び絶望に飲み込まれそうになった。
「龍神様!逃げるぞ!」
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