第51話
「お、なんかうまそうなの作ってるな」
ひょいっと後ろからヴァルさんが覗き込んだ。
「おかえりなさい。何か食べられるもの取れた?」
「ああ、これ見つけた」
ヴァルさんが見せてくれたのは、ポポだ。
「お、おおお!ポポだ!」
嬉しい!あのクリーミーな感じ。忘れられなかったんだ。
でも……。
「これ、まだ食べごろじゃないね……」
青くてつるんとしてる。追熟であと3日から5日はかかりそう。出発までに食べごろになればラッキー。ならなかったら、置いていくのか?もったいない……でも、荷物を無駄に増やすこともできないだろうし……。
「食べごろ?」
「食べごろになると、ちょっと黒い部分が出てきて、触ると柔らかくなるんだよ」
ヴァルさんがショックを受けた表情を見せる。
「そういうことだったのか……。黒いのついてるの見た目が悪いと思って、きれいなのをフワリに食べさせようと思って選んだんだが……失敗した……」
私のために……。
ヴァルさんの手からポポを受け取る。
「ありがとう、ちょっと置いておけば食べごろになるから、毎日ワクワクしながら待てると思ったら楽しみが増えたよ」
「フワリ……」
ヴァルさんが私が慰めの言葉を口にしたと思ったのか複雑な表情をした。
「ヴァルさんだって黒い水から白い粉がいつできるのかなって考えて待ってるの楽しいでしょ?」
「ん?そうだな、確かに。まだかな、まだかなと気にしながら待つのって楽しいかも」
ヴァルさんが今度は笑った。
「じゃあ、これはフワリの楽しみだ。黒い水のところに一緒に置いて、毎日一緒に見に行こう!」
毎日、一緒に……!
「うんっ」
「あ、そうそう、グリーンモンスターで忘れてたが、さっき紫のって頼まれて採ってきたやつ、あっちに置いたぞ」
ああ、そういえば、葛を見つけたときにヴァルさんが胸に抱えてたの落として私のところに駆けつけてくれたっけ。
紫の花のカタクリ。
間違えるフラグでトリカブトを採ってきたりしてないよね?
と、振り返ってみると。
「なんで!」
山盛りの山ブドウが鎮座している……。
そういえば紫の……花のカタクリのことも会話したけど、紫の山ブトウも前に話をしたっけ。
でも、ドライフルーツにして持っていくには不適当という結論に達しましたよね?
いや、私の脳内会議でヴァルさんには伝えてなかったっけ?
……どうしよう。せっかくヴァルさんがとってきてくれたのに……。
あと3日ここにいる間に消費できるような量じゃないよ……。だって、私の3倍くらいある。私を3人分抱っこするくらいの量をヴァルさんは抱えて運んできたってこと。
どうする、私……。
とりあえず……。ふと、目に入ったのはザルだ。いや、ザルもどきだ。
「ヴァルさん、山ブドウジュースを作ろう!実をあらってからつぶして。ザルでこして、念のため火を入れて冷まして飲もう!」
「良し!任せてくれ!」
うん。任せたよー。つぶすの得意だよね。……力加減間違えないでね……。
「ジュースか」
嬉しい。コーヒーが飲みたいと強く思った理由の一つが、水しか飲んでなかったからなんだよね。味のついた飲み物が飲みたい。
山ブドウジュース、いいじゃない?
きっとジュースにすれば3日間で消費できないこともないんじゃないかな?
今日から山ブドウジュース飲み放題っていうのも、体に栄養蓄えられていいかも。いや、栄養蓄えれるか分からないけど、少なくとも果糖とかあるよね?太ったくらいの方がいいような気がする。
あと、少しだけドライフルーツも作ろうか。そういえば、確かポポの実で少しまだ硬い物でもドライフルーツができるんだったっけ?これも作ってみよう。柔らかくなったものでは難しかったからちょうどいいかも。
「絞ったら腰ながら石鍋に入れてあっためるんだったな?」
ヴァルさんが山ブドウの処理してる間に、夕飯の続き。
野蒜もヴァルさんがとってきたので、オーク肉の野蒜の葉っぱ巻きも作る。
「さ、夕飯完成!ヴァルさん食べよう!」
テーブル代わりの木の上に、並べる。
葛の葉チップ。ガランガルチップ。葛の芽肉巻き、野蒜葉肉巻き。
ドングリ焼き。つぶしてまとめて焼いたどんぐり。それから山ブドウジュース。
「うおー、ごちそうだなぁ!」
ヴァルさんが葛の葉チップを食べた。
「ぐお、パリパリしてほんのり甘く、塩味が聞いて、うめーな、これ、超うめーじゃん、何だこれ?」
葛の芽肉巻きを食べた。
「うお、肉と中に巻かれた野菜が混じって肉だけで食べるよりあっさり食べられてうめぇな。なんだこれ?」
どちらも葛だよと伝えると、何度も同じことを言う。
「グリーンモンスタースゲーな!グリーンモンスター、マジスゲー!」
にやりと笑って答えてやった。
「今は時期じゃないけど、花も食べられるし、豆も食べられんだよ」
「ぐおおお、グリーンモンスタースゲー!」
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