第43話
「では、会議をはじめます」
ポンポンと地面をたたいてヴァルさんに座るように指示する。
「会議?」
私とヴァルさんは向かい合って座った状態。足元には、ヴァルさんの描いた地図もどき。
「私はいろいろなことを知らないので、教えてください」
「はい」
「今いるのはここだよね、荒野。森を抜けるなら、どれくらいの日数かかるの?」
丸から向かい側の四角につつっと指を動かす。
「そうだな、俺たちがいたのは、中央当たりだろう。それで急いで1か月だった。端から端へ移動するとなると、直線距離でも急いで2か月。危険な地域を避けながら、水場を確保しながらとなればその倍」
4か月か。少しのんびり進めば半年以上かかるってことね。
うわー、そりゃさすがにごめんって気持ちになるよね。
「じゃあ、海に向かうとして、海を渡ることはできるの?」
ヴァルさんが首を横にふる。
「いや。船がない。魔物が出る森にわざわざ来る者もいないし、森を抜けて船を出す者もいない」
そりゃそうか。
「じゃあ、山を越えるのは?」
「ドラゴンの住処があると言われている。危険だ。山越えはまず無理だと考えた方が良い」
なるほど。
「じゃあ、この荒れ地の向こうは?人の住む場所に出るの?」
「隣の国に出る。地上を進むなら、直線距離で移動できるから2~3週間もあれば着くはずだ」
地上を進む?
空を飛んで行くこともできるのかな?それとも地下迷宮でもある?
ヴァルさんが首を横に振った。
「魔物の危険は減るが別の問題がある」
別の問題?
「魔物もほとんどいないが、鳥の一羽も飛んでない」
「ふーん」
鳥が飛んでないってことは、磁場でも狂ってるのかな?鳥は磁覚能力で方向を確認するとかいうもんね。磁場がくるっていたら、方位磁石とかも使えず危険と……って、方位磁石なんて持ってないよね?
「ああああ、そういうことか……、鳥が飛んでないって、食料がないってこと?」
ヴァルさんがうんうんと頷いた。
そっか。魔物が出ないってことはオーク肉や角ウサギ肉も手に入らないし、鳥が飛んでないってことは、ヴァルさん得意の焼き鳥魔法も使えないってことね。本人曰く焼肉魔法だけど。
「それに水が一番問題か……」
食べ物は3日4日食べなくても死なないけど、水分も取れないと熱中症やら脱水やら下手したら数時間で命の危険があるもんね……。
「水は大丈夫だぞ?」
ヴァルさんがけろりとした顔でいう。
「は?だって、川も湖もなさそうだし、オアシスとかもないなら」
オアシスは砂漠だっけ。
「3、4か所掘れば水は出ると思うぞ?」
は?
「あの辺、植物が比較的生えてるところ、ちょっと待ってろ」
と言って、ヴァルさんは植物の生えている場所……あ、あれサボテンじゃん。サボテン食べれば水分補給になるってこと?
背中からルツェルンハンマーを取り出し、穴を掘りだした。
サボテンで水分補給じゃないの?サボテンに地下茎とかあったっけ?水袋みたいなのにためてるみたいなのあったっけ?
あっという間に、掘りだした土が小山になっている。
すごいな。あれはもしかしたら土属性魔法とかも併用してたりするんだろうか?
あれ、でもヴァルさんは火魔法使ってたから違うのかな。
近づこうと思ったけど、掘った土を頭からかぶる未来しか見えないので、そっと距離を置いて見守る。
退屈しのぎに、荒野に生えている植物を観察。
くるくると、回転草が風に吹かれて転がっていく。
数が少ないところを見ると、残り物?確か秋だか冬だかに枯れて一斉に転がるはずだけど、青々とした草が生えてるし。
これが枯れて根っこから切り離されて風で飛ばされるんだよね?
回転草、タンブルウィードと呼ばれるものは、固有の植物名じゃなくて、風で回転しながら種をまき散らし増殖する植物のことだ。
いろんな種類の植物があるらしいんだけど、西部劇とかで見るのはほとんどロシアアザミらしい。
「あー、なるほどねぇ……ロシアアザミねぇ……なるほど、なるほど」
「おーい、出たぞ!」
ヴァルさんの声に振り返ると、土の山が3つできていた。
穴も3つ。いつの間にそんなに掘ったのだ……!
「こっちだこっち~」
声のする穴に行ってのぞき込むと、校舎の4階から見下ろすくらいの深さの穴が開いてた。
うわっ、落ちたら死ぬ高さだ!10mはあるよ。怖っ。
底に立ち、手を振るヴァルさん。足元には水がじんわりと染み出しているみたいだ。
なるほど、水は掘れば地下から湧き出すというわけか。
「って、普通の人は手に入れられないよっ!」
なるほどじゃなくて、ヴァルさんの荒業じゃんっ!
私なら確実に乾き死ぬ……いや、サボテンがあれば生き残れるかも。
あれ?
水があれば……。
「ヴァルさん、森を抜けるのは諦めて、荒野を抜けよう」
「いや、水が出るからと言って、食べる物がないから無理だぞ?」
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