第29話 沈黙と目覚め
講義が終わり、俺は恐る恐る講義室を出た。
関水「おい。ちょっと飯いくぞ。」
そこへ長田が割って入る。
長田「午後からの実験の打ち合わせあるんで、失礼します。」
関水「わかった。じゃあ部活で」
「わかりました。」
俺は長田に引き摺られ食堂へ向かった。
長田「あいつでしょ。名前は?」
津田「関水先輩。深入りしなきゃいい人だよ」
「...いい人だとは思うよ」
言葉を濁す。
長田「田中くんさ彼女いる?」
「いない」
長田「友達は?」
「いない」
長田「作ろうとしてる?今後どう生きてくの?」
「いなくても、生きてけるよ」
長田「それで人生楽しいの?」
--五月蝿い。わかってる。俺が人生を放棄してるのは。
津田「いいやん。関水先輩と常に一緒にいるから。」
「...楽しくないよ。あの人といても...」
津田「田中が選択したんでしょ。嫌なら断れよ。」
津田の言葉が胸に刺さった。俺の選択の結果が今の地獄なのだと教えられた。
長田「田中くんはゲイなの?」
「...違うよ」
長田「じゃあ、なんで関水といつも一緒なの?」
「一緒にいたい訳じゃない」
長田「殴られて強制されてるの?」
「......」
--もうやめてくれ。俺がおかしい事はわかってる。変わらなきゃいけない事もわかってる。
津田「強制されてるとか思ってるなら変わらないよ。」
津田「逃げる方法はいくらでもある。だけど、その選択を取らなかったのは田中自身」
津田「周りの助けで、今の状態から抜け出れたとしても、そのままなら、またどこかで同じ状態になるよ」
津田「自分で動かなきゃ、関水先輩がいなくなった後も変わらないぞ」
--津田は優しいな。確かにここで周りから助けられても、俺は変わらない。現に、昔から基本的に支配される側。支配しやすいからだろうな。だから変わらなきゃいけない。わかってる...
俺は二人との会話で、自分が変わらなければいけない事を思い知った。
--変わらなきゃ。でも、どう変わればいいのかな?
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