第6話 異変、蝉の声の下で
関水さんと遊ぶようになって、数ヶ月経ち、日々は前よりも色鮮やかになっていた。
関水さんは大学寮で生活しており、大学寮に呼ばれるようになっていた。蝉の声が聞こえ、まばゆい日差しが差し込む夏休みに入っていた。
関水「おい、田中。少しお願いがあるんだけど。今日バイトの送迎できないか?」
関水「バイクの調子が悪くて送って欲しい。」
「いいっすよ。何時に送ればいいですか?」
関水「10時に送って、5時に迎えにきて。」
「もうすぐ、10時っすよ。」
ニヤリとする関水。その表情に若干の違和感を感じた。
関水「出発は夜の10時な。あと、朝の5時に迎えにきて。」
俺は耳を疑った。
普通、深夜の時間帯の送迎を頼む時、申し訳
なさそうな素振りをする。関水さんにはそんな素振りは全く見えなかった。
俺は自宅まで車で一時間かかる。送迎をした場合、車中泊か満喫かどこかで泊まる必要性があった。
--断るべきか?...いや、いつもお世話になってるんだ。これぐらい行くべきだ。
普段から食事を奢られる事が多かった。その為、このぐらいはしなければと考えていた。
「わかりました。」
関水「さんきゅ。じゃあ、この洗濯と部屋の掃除も頼むわ。寝てくるから昼の12時に起こして。」
それは"頼み事"ではなく、"命令"に聞こえた。
--いつもは優しいけどどうしたんだ?
いや、いつもお世話になってるし、これぐらい普通の事だろう。
俺はまた孤独に戻る事が怖かった。色のない日々には戻りたくなかった。ここで断ったら、また孤独の日々に戻るのではないかと恐れていた。
俺は、掃除と洗濯をこなした後、ちょうどお昼の12時になった為、関水を起こしにいった。
関水「あざ。うーん。まだ眠いから14時に起こして。」
--だったら最初から14時に起こせって言えばいいじゃないか?外に出てご飯食べに行けたのに。
コンビニに行き昼食を摂り、寮に戻ってきたらちょうど14時だった。
「おはようございます」
関水「うーん。おっけ。飯食いに行くぞ。」
「わかりました。」
飯を食べたとは言えなかった。関水さんの気分を害すのではないかと思ったからだ。
ご飯を食べて寮に戻ると16時ごろだった。
関水「20時半頃起こして。飯行ってから、バイト行こう。」
--俺も車で寝てくるか。
20時30分になり、関水さんとご飯を食べ、バイト先に送った。バイトはゲームセンターの店員だった。陽気な関水にはお似合いのバイトだと思った。関水を見送った後、俺はそのままゲームセンターの駐車場に停めた車内で、眠りについた。
--っ眩しい。
車内に朝日が差し込んでいた。重たい瞼を擦り、スマホを確認する。時刻は5時少し前だった。
--そろそろ関水さんが来るな。送った後、家に帰ろう。
関水さんがバイトから帰ってきて、助手席に乗り込んだ。
関水「さんきゅ。そうだ、明日友達が誕生日だから、これで〇〇でマグカップ買ってきて。〇〇は9時開店かな。」
「...わかりました。」
関水「あと今日も送迎よろしく。同じ時間だから。」
--流石におかしい気がする。
「あの僕家に帰れてなくて、風呂とか入れてないので、帰りたいです。」
関水「バイク直るまでだからお願い。それに10時から5時なら帰れるやん。家まで往復2時間だから5時間も自由時間あるやん。」
「えっと風呂入ったら、寝る時間がないというか」
関水「数日だろ」
関水の無機質な声が怖かった。
「わかりました。」
関水「あと、臭うから風呂入りに帰れ。今日は許すけど。」
「...すみません。」
関水さんとの関係性が変わった気がした...
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