第壱話:二人の暗殺者




「月が綺麗だな…」


「…ライキ先輩。プロポーズですか?」


「すまないが、男に興味はない。あいにく、俺は男だからな…」


 俺に彼女がいると言ったらこいつはどんなにキレるだろうか。口がなくなっても言えない。いや、そもそも口がなくなったら喋れないか。


「分かってますよ。僕もできることなら先輩とは、縁を切りたいです。」


「まあまあ、そう言うな。これが終わったらラーメン奢ってやるから。」


「これって…この仕事、一ヶ月かかりますよね。」


「十杯奢ってやる。」


「録音しましたから。」 


「…そうか。」


 どんだけラーメン好きなんだろうか。親からのお小遣いが少ないと聞いたことがあるが、そんなんでラーメンにハマってしまうとは、悲しいものだな。ちょくちょく奢ってあげるとしよう。


「先輩って、よく奢るよ、って言ってるけどそんなお金あるんですか?」


「もう十六だからな。お小遣いと合わせればそんぐらいだろう。」


「ってことは、僕も来年自分でアルバイトしてラーメンを自分で買えますね。」


「それはまずいな。」


 来年は、来年で考えないとな。こいつを従えるのも苦労する。


「あ、先輩。あの人違いますか?」


「いや違う。確かに似ているが微妙に違う。」


「また、違うんですか〜?もういい加減にしてください…。もう四日目ですよ。」


「いや、今日で情報では最後の可能性のある日。絶対くる。」


「……先輩。もしかして、敵にニセの情報で操られてませんか?」


「それ以上言うな。精神がどうにかなる。」


「僕はもうなりかけです。」


「そうか。気にするな。」


「…………はあ。」


 これはまた、気が遠くなりそうだな。後輩には悪いが、情報を探す所からやらなければ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 あれは、夏のことだった。この平凡な街に突如として大きな犯罪者グループが、現れた。幾度なく犯罪を犯し、不正な金を集めた。


 

 ある日だった。市長が死んだ。いや、殺された。誰が殺したか、全員がわかっていた。殺した奴らは、死んだ市長の死体の上で自分たちの名を“フィスト”と名乗った。市は混乱に塗れていた。元々市長の能力が強すぎて、成り立っていた治安だ。新しい市長が急ぎで就任してもその混乱は治まらなかった。



 その数日後、俺に“フィスト”の捕獲依頼が来た。実績がそこそこある人を手当たり次第依頼しているのだろう。一週間頑張ったが、チャンスすらなかった。市も“捕獲または討伐を依頼する”と言っている。つまりは、捕獲とかもう無理だから殺してもいいよ、ってことだ。


 

 そこで、俺は数少ない友人のツテで究極アルティメットの資格を持つ後輩、シュウを一緒に“フィスト”ごと、殲滅することにした。



 俺の能力アビリティは、“対象を石化させる”こんなに曖昧な説明にしたのは、相手の体力など色々な関係で人によって石化できる時間が違うからだ。そのせいで最近究極アルティメットから、天才ジーニスに落ちた。全く迷惑なもんだ。一方で後輩のシュウの能力アビリティは、“対象に視認されずに対象を二十秒間見つめ続けると対象を即死させる”で、とてもわかりづらいから心の中ではストーカー、と呼んでいる。…後輩には一回も言ってない。



 そして、苦労して情報を得たがこれは、ハズレだと言うことだろう。相手もそこまで間抜けではない。甘く見過ぎていた。次はしっかりと真偽を確かめないとだな。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「…輩!先輩!なにをボーっとしているんですか?しっかりしてください!」


「す、すまん。この仕事の先が見えなくて嘆いていた。」


「それ自分で言いますか…?僕にも迷惑かかっているんです。がんばってください。」


「すまない。明日からまた情報集めになるだろうから頼むぞ。」


「…諦めないでください。」



      ---第壱話 end ---


 

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