第11話

「ねえ、今日は少し話をしない?」


 魔法学院を終えた日の夜、アリアは僕のところへやってきてそんなことを言い出した。この王都のレイクロードの屋敷では僕とユリアはそれぞれに部屋を分けて生活している。理由は単純で屋敷が広くて部屋が余っていたからだ。アリアからも部屋は遠慮なく使っていいと言われていたためユリアは遠慮なく広い一室を使わせてもらうことにした。

 そんな状況のため、普段僕達は別の場所に分かれて生活している。しかし今日は珍しくユリアが僕の部屋を訪ねてきた。


「どうしたの? 君が尋ねてくるなんて珍しいね」


「たまにはいいじゃない、それとも私と一緒なのは嫌かしら?」


「ううん、そんなことはないよ」


「じゃあ私の申し出受けてくれる?」


「もちろん。断る理由がないからね」


「ありがとう」


 アリアはそう言ってユリアの隣までやってきて椅子に腰かける。そのまま目の前のテーブル

にあるものを置いた。


「アリア、これは?」


「お酒よ」


「お酒って……」



 前世の時はお酒を飲む習慣は彼女になかったからユリアは少し驚いてしまった。


「君、お酒を飲む習慣なんてあったっけ?」


「いや。でも今くらいはいいでしょう」


「屋敷の人達には怒られないの?」


「平気。やるべきことは終わらせてるし。それともあなたは私は仕事をさぼるように見えるの?」


「……いいや。君がそんなことをするなんてありえないのは僕が一番よく知ってるよ」


「ふふ、でしょう」


 機嫌よさそうに笑うユリアは持ってきたグラスにお酒を注ぐと煽るように飲んだ。グラスに注がれたお酒は一気に消える。


「ユ、ユリア、ちょっと一気に飲みすぎなんじゃ」


「なによ、せっかく再会出来た旧友との再会なんだから固いこと言わないの」


 ユリアが注意したけれどアリアは構わず、お酒を飲んでいく。ああ、どうしようとユリアは頭を抱えた。どうも今日のアリアはタガは外れているようだ。


「んっ」


 何杯か煽るように飲んだアリアはユリアのほうにグラスを差し出してくる。要はお前も飲めということだろう。


(この肉体は飲んでも大丈夫なんだろうか)


 この世界ではお酒を飲むことに特に制限はない。なので気にせず飲むということも出来たのだが酔いが回って醜態をさらすのは避けたいとユリアは思った。


「なによ、付き合うって言ったんだからちゃんと私の相手をしなさいよ」


 アリアはユリアが自分のグラスを受け取るのを迷っているのを見て不機嫌になる。用は自分の酒は飲めないのかと言いたいのだろう。


(これは断ることは出来なさそうだね)


 観念したユリアはアリアからグラスを受け取った。それを見たアリアは嬉しそうに微笑むとユリアのグラスにお酒を注ぐ。


「それじゃ遅れたけど乾杯~~」


「乾杯」


 酔ったアリアに合わせてユリアもグラスを鳴らす。その後はお互いに軽くお酒を口に含んだ。少し甘い味がしたため果物から作ったのだろうかなどとユリアは考えてしまった。


「それじゃ、今日はあなたが死んでからのことをたっぷり聞いてもらうからね」


「分かったよ。飽きるまで付き合ってあげるから」


「そうこなくちゃ」


お酒をアリアは相変わらず早いペースでお酒を飲み、ユリアが死んでからのことを彼女に話して聞かせ、ユリアはゆっくりとお酒を口に含みながらアリアの話を聞いていた。

 とても楽しそうに今までのことを話してくれるアリアを見てこういう彼女の顔が見ることが出来たのだから転生も悪くないとユリアは思った。

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