第4話 菜月の奉仕と、罪の香り
菜月の独占欲と嫉妬が剥き出しになった瞬間、佑樹は最後の抵抗を諦めた。彼の理性を麻痺させたのは、菜月の荒々しい行動だけではない。ソファの隅で、両手を固く握りしめたまま、この光景を熱心に見つめる文香の視線が、彼の中で罪悪感と倒錯的な興奮を限りなく増幅させていた。
「先は、私がもらうんだから!」
菜月は、佑樹の膨張した熱い肉塊を、まるで宝物のように抱え込んだ。彼女のポニーテールが、ラブホテルの薄暗い照明の下で激しく揺れる。その小柄な体躯からは、甘い汗の匂いが放たれ、佑樹の股間に触れるたびに、彼の肌をひりつかせた。
佑樹は、その圧倒的な衝動と、彼自身の性的コンプレックスが、この行為によって肯定されることへの渇望に、抗うことができなかった。彼は、自分の存在価値が、この肉体の異形によってしか証明されないという、歪んだ現実に甘んじた。
「……待て、菜月」
佑樹は、喉の奥から絞り出すような声で、停止を求めた。菜月は顔を上げ、挑戦的な瞳で佑樹を見つめる。
「なんだよ、まだ抵抗すんの? 友達の悩み、解決させてやるって言ってんだろ」
「抵抗じゃ、ない。条件だ」
佑樹は、屈辱と支配欲の混ざった感情に突き動かされ、菜月の最も触れられたくない部分へと、矛先を向けた。
「俺が、お前にこのトラウマの解決を委ねる代わりに、お前のコンプレックスも、俺に委ねろ。お前の胸に触らせろ」
菜月の顔から、一瞬にして能動的な興奮が消え去った。彼女は、小柄でスレンダーな体型であるため、胸が小さい(Bカップ)ことを誰よりも気にしており、それが彼女の根深いコンプレックスだった。幼馴染とはいえ、その部分を指摘されるのは、彼女にとって屈辱以外の何物でもない。
「っ、あんた、何言って……」
菜月は、抵抗するように体を退かせようとした。その胸元は、彼女の荒い呼吸に合わせて、小さく上下している。彼女は、佑樹の肉体を貪ることはできても、自身の肉体の弱みを晒すことには強い抵抗を覚えている。
「拒否するなら、やめろ。俺のトラウマを覗き見する権利は、お前にはない」
佑樹は、冷酷な言葉で、彼女の逃げ道を塞いだ。彼は、この一瞬の主導権を握ることで、自分自身の屈辱的な立場から、優位な支配者の立場へと、精神的に移行しようと試みたのだ。
菜月は、奥歯を噛み締めた。その瞳には、葛藤、屈辱、そしてこの特別なスリルを独占したいという、強い欲望が複雑に絡み合っている。数秒の沈黙の後、菜月は、観念したように、力なく頷いた。
「……分かったよ。好きに、しろ」
その言葉を聞いた瞬間、佑樹の心の中で、屈辱の感情が歪んだ勝利の快感へと変質した。彼は、菜月のタンクトップの裾を掴み、小柄な彼女の上半身をベッドへと押し倒す。そして、彼女の胸部に、彼の無遠慮な掌が触れた。
菜月の肌は、汗で微かに湿り、熱を持っていた。彼の掌の下で、その小さな胸部が、まるで雛鳥の心臓のように激しく鼓動しているのが伝わってくる。佑樹は、その胸の柔らかさに触れ、彼女の最も弱い部分を掌握したという、倒錯的な全能感に満たされた。
「佑樹……早く、してよ」
菜月は、羞恥心からか、焦燥感からか、耳元で掠れた声を発した。
「ごめん、触れてみると、見た目以上に素敵な女の子の身体をしているんだなって感動してた。このままずっと触れていたいと思うほどに……」
佑樹は、その胸から手を離し、菜月の顔へと視線を移した。菜月は、覚悟を決めたように、彼の股間に向き直る。彼女は、まるで初めて触れる生命体を見るかのように、彼の怒張した肉塊を見つめ、ゆっくりと、その小さな唇を開いた。
菜月の髪から滴る雫が、佑樹の皮膚の上を滑り落ちていく。彼女の舌は、好奇心と緊張感からか、まだ拙い動きしかできず、硬く熱を持った佑樹の性器の表面を、戸惑うように舐め上げた。その不器用な愛撫は、佑樹に技術的な快感ではなく、「誰にもできない行為を、この幼馴染が私のためだけに捧げている」という、精神的な充足をもたらした。
菜月は、その行為に慣れていない。彼女の喉が、時折、佑樹の根元に触れ、彼女の顔が苦痛に歪む。だが、その苦痛の表情の奥には、この禁断の行為がもたらすスリルへの満足が、確かに光っていた。
佑樹は、天井を見上げた。頭の中は、罪悪感と、快感、そして幼馴染の甘い体臭によって満たされている。
ソファの上では、文香が、両手の拳を強く握りしめていた。彼女の瞳は、菜月の口の中で、佑樹の肉塊が激しく動く様子を、一瞬たりとも見逃すまいと、限界まで見開かれている。文香の内面では、親友の恋人を横取りしたいという、彼女の抑圧された本能が、菜月というライバルの行為を通じて、代理の興奮と、強烈な嫉妬へと変質し始めていた。彼女の唇からは、乾いた、微かな喘ぎが漏れる。
佑樹の脳裏に浮かんだのは、元カノの冷たい瞳ではない。それは、必死に彼の肉体を肯定しようとする菜月の献身と、罪悪感を上回る好奇心に突き動かされる文香の熱い視線だった。この二人の幼馴染だけが、彼に「お前は男として価値がある」という、最も切実な肯定を与えてくれている。
菜月は、数分後、その行為に疲れを感じたのか、口を離した。佑樹の肉体は、極度の興奮によって、今にも爆発寸前だった。
「もう、無理……」
菜月は、そう言いながら、唾液で濡れた唇を拭った。佑樹は、その瞬間、彼女の疲労と、達成感の混じった表情を見て、支配者としての最終的な要求を突きつけた。
「自信を持て、立派なだけではないか。俺の手で終わらせてやる。だが、最後まで、この光景を見届けろ」
佑樹は、菜月の顔に精液をぶちまけるという、最も屈辱的で、最も独占的な行為を求めた。それは、彼の屈辱的なトラウマを、菜月に共有させるという、歪んだ共犯関係の成立を意味する。
菜月は、抵抗の言葉を失った。彼女は、目を閉じ、佑樹の支配を受け入れた。その小柄な胸部が、息を整えるように深く上下する。
佑樹は、彼の肉塊を自らの手で握り、数度の強い摩擦を加えた。彼の頭の中では、菜月の甘い体臭、文香の熱い視線、そして彰太への裏切りという罪の意識が、混然一体となり、快感の臨界点を押し上げた。
「んんっ、あぁ……!」
佑樹の口から、呻きが漏れた。その瞬間、彼の肉塊から、熱く、白い精液が勢いよく噴き出した。精液は、菜月のポニーテールを掻き分けて露出した額、頬、そして彼女が最もコンプレックスに感じている小さな胸部へと、容赦なく、そして大量に浴びせかけられた。
精液が菜月の肌に当たる、生々しい音が、部屋の静寂を破る。
菜月は、精液を浴びた後も、目を閉じ、呻き声を上げることはなかった。彼女の身体は、精液の熱と、罪の共有による排他的な満足感に満たされていた。精液の独特な匂いが、部屋のアロマと混じり合い、罪の香りとなって充満する。
佑樹は、屈辱的なトラウマを、幼馴染の女性に肯定させたという、歪んだ自己肯定感と深い疲労に支配された。
そして、ソファの上の文香は、両手を強く握りしめたまま、この淫靡で生々しい光景を目撃し、口元を微かに歪ませた。その瞳には、羨望と、強烈な嫉妬の予感が、はっきりと宿っていた。菜月が、佑樹のトラウマの原因である「肉体」を通じて、彼を独占したという事実に、彼女の文学少女としての理性は、完全に打ち砕かれたのだ。
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