ひばり鳴く丘でたぬきは綴る

ほたる色のたぬき

かなしいすずめ

 草原で絵を描く。

 赤や黄や紫をのせて、空を描く。


 筆を走らせて、走らせて。

 ぱたりと手を止めた。

 

 なんだか、ちがう。こんなんじゃない。


 そこへ一羽のすずめがやってきた。

 すずめはキャンバスのそばにとまって、さめざめ泣きはじめた。

 身を切るように声をあげて、ついには叫ぶようにおいおい泣いている。

 

 わたしはそれが気に入らなった。

 そして文句を吐く。


「おい。すずめ。おまえ、すずめのくせになんで泣いているんだ」


 すずめは恨めしそうに私を睨んだ。

 すずめだって、悲しけりゃ泣くんです。


「すずめが悲しいもんか。すずめは楽しいもんだって、相場が決まってる。悲しいのはこまどりだろう」


 そうは言っても、悲しいもんは悲しいのだから仕方ないじゃないですか。


 そう言うと、すずめはふたたびさめざめ泣き出した。


 だんだん腹が立ってきた。

 わたしはキャンバスいっぱいに楽しそうなこまどりを描いてやった。

 そして、わたしはすずめに言う。


「おい。すずめ。こまどりだってこんなに愉快にやっているんだ。すずめはもっと楽しくなきゃだめだ」


 すずめはもう、泣いていなかった。

 

 

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