[短編]就職先がなかった美大生。

「良いですか?この絵画の女性の人物はきっと、男の人のアレを求めているのです。分かりましたね」


 西洋美術史の講義で、教授はハハハと笑いをする。そんな授業を受けていた一生徒である、進藤楓ー男は教授の下品な発言を聞き、空虚な気持ちになり、机の上で溜息をついた。


(はぁ…何でこんなクソみたいな授業を受けなきゃいけないんだ?)


 と、進藤楓は、授業を聞きながらため息を吐いた。冗談で言ってるだろうが、大体この教授は、下ネタ等の話が多く講義で、有意義な話をしない。


 そもそも作者や、創作者を貶めているようにしか聞こえなかった。


(何故、自分はこんな所に居るのだろうか?)


 と、進藤楓は苦々しい思いを抱いていた。



☓☓☓


 進藤楓は、大学にいながら、空虚でいた。800万円という高い学費を払いながら、美術大学に在籍しており、意味の分からない授業を受け、何故自分はこんな所にいるのか分からなかった。


 親から反対は受けなかった。しかし、500万円もの奨学金という借金を借りた。しかし、美術大学に行く事に渋っていた様子だった。

 

『楓…お前は馬鹿なんだから、仕方ないな』


 楓はそんな父親から、育てられた。だから、常に何かを否定する父親をうざったく思っていたが、真実だから仕方ないと楓は思っていた。


「クソ大学に行った。でも、俺はこんな所しか受かるところがなかった」


 そんな思いを抱えているから、彼は辞めれなかった。

 借金を抱えているから、金を工面する為か、必死にバイトをし、サークルに入れないし、だから、有意義な学生生活なんてなかった。


(何しているのだろう…俺は。クリエイターの仕事をする為に、大学に行ったのではないのか?)


 進藤楓は吐きそうな日々に鬱々とした思いを持ち、金の工面を心配した毎日を、送る。

 もう何の為に生きているのか分からない状態だった。


 そんなことを相談しても、借金を抱えるのが当たり前だ!という親の八つ当たりに、楓は戸惑うばかりだった。


☓☓☓


 そんなこんなをしていたら、もう就職の期間になった。

 大学に行った筈なのに、何もスキルがない楓はことごとく会社に落ち、焦る日々を送る。


 ゲーム会社は嫌いだった。そもそもゲームには良い思い出がない。


『楓!こんな下品なもの、捨てなさい!』


 友人から借りたゲームをこっそりとしていた時、

 何でもかんでも否定する母親の元に育った。だから、学生時代の時もコンテンツというものに深くはまれなかった。


 しかし、絵を描くことが好きで。ひそかに漫画家になることが夢だった。

 漫画は大好きだった。それすらも否定されたけれど、自分の好きなものはあった。


 漫画もゲームもアニメも見ない家族と、オタクコンテンツにハマる楓の間には溝があった。


 そうやって親の顔色を窺って、生きていた楓は、漠然と生きてしまい、好きなものを否定されて生きてしまい、専門性というものは持てず、只自分に自身がないような、そんな人間になってしまった。


 もう、疲れてしまった。


 そして、進藤楓はそのまま首をつって死んでしまった。

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