第4話 都市の崩壊
深夜、東京駅の静寂を裂く轟音。
最初は低いうなり声、次に金属が引き伸ばされるような高音の断裂。中心部──駅の骨格が、一瞬にして光を放ち、昼のような閃光が夜を貫いた。
光が引いた瞬間、そこには「跡形」など残っていなかった。柱も改札も床も──空間だけがぽっかりと抉られ、風が外側から中心に向かって吸い込まれる。爆心地にあった物体は、記憶だけを残して消え去ったかのように見えた。空気は熱く揺らぎ、瞬間的に硝子の雨が街を覆う。
衝撃波は同心円状に広がり、直撃を受けたビル群が悲鳴を上げる。外壁のガラスが雪のように砕け散り、最上階のファサードが前方へ押し出される。次の建物が押されるたび、まるで巨大なドミノの連鎖のように崩落が連鎖する。鉄骨が捻れ、コンクリートが粉となって空に舞う。
駆けつけた警察 自衛隊の声も、煙と粉塵の中でかき消される。叫び、崩落音、破片の打撃音──すべてが都市を押しつぶす波となった。鏑木悠真は胸の奥で緊張と怒りを感じながら、瓦礫をかき分け、手探りで負傷者を助ける隊員たちと目を合わせる。
だが車に乗り込み、現場から離れようとしたその瞬間、無線が鳴った。モニターに映る映像には、黒煙と火花に包まれる皇居の光景が映っていた。中央の建物が閃光に飲まれ、瓦礫と庭園の石材が連鎖的に崩れ落ちる。都市の中心にさえ、組織αの手は伸びていた。
車窓を揺らす衝撃波、舞い散る粉塵と瓦礫。街灯が赤く瞬き、逃げ惑う人々が黒い点となって霞の中に溶ける。鏑木はアクセルを踏み込み、頭の中で次の行動を整理する。東京駅から皇居までの爆破連鎖、偶然ではない。計画は精密で冷徹、都市全体を掌握する存在の意志が見える。
「……やつらは何が欲しい?」
窓の外、崩れ落ちる建物と舞い上がる瓦礫の向こうに、組織αの輪郭はまだ見えない。だが、鏑木はその存在を肌で感じた。都市の秩序は粉々に砕かれ、日常は瓦礫と煙の中に埋もれた。
夜空に立ち上る煙と火花、崩れ落ちる建物の影に、都市の混沌と鏑木の決意が交錯する――組織αの序章は、今や街全体に広がったのだ。
特命捜査班 雨に消えた影 ちはるんるん @King610
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