第41話:レッドオーシャン②


――――多くの他隊員に対し、セイイチが持っている優位性――深く考える事。


セイイチは、鍛錬を始めたのは15歳。


国衛隊を志し幼少より鍛錬してきた者たちに比べ、明らかに遅い。


つまり、明らかに――現時点での技量が劣る。




徒手格闘では……全力で撃っても打撃は弱いし、予備動作も大きく相手に悟られやすい。


長年鍛錬してる者には、打撃力、予備動作の無さなど、あらゆる点で到底敵わない。


武器格闘では……力も技術も低い。


重い日ノ国刀を自在に扱うには、筋力は足りず、精妙な身体操作もできない。


手裏剣類も、速く遠く、飛ばすこともできない。




――だからセイイチは、創意工夫をした。


ガリ勉だった頃に、合理性と効率性を追求する本質的な思考を、身に着けた。


クラスメイト達が、予め決められた正解を暗記する事だけに思考力を費やしている中、セイイチは どんな勉強法が良いか……を考え続け、試行錯誤をし続けた。


脳科学の書籍やWe Tube動画を見て、専門家の研究結果やインフルエンサー達の思考回路を、自分の勉強に落とし込んだ。


結果、全国で30位に入る位の――天才的とは言えないが、充分に秀才と言えるレベルの成績を実現した。


創意工夫の、強さを知った。




――先程戦った場所から少し離れたところで、数分間 横たわり目を閉じて休んでいるセイイチ。


エレナは、見張りをしてくれている。


エレナとの体力の差が、セイイチの体力不足が、顕著に可視化された。




――見栄を張って、”休憩など要らない” と余裕を見せつけたい衝動は、セイイチの中にもあった。


しかし、それを遥かに上回るのは、セイイチの信念――に支えられた、冷静な判断力。


自分のちっぽけな虚栄心を俯瞰したうえで、体力を回復させる選択をした。


女の子に護られるなんて、男として恥ずかしい……とは思わなかった。


エレナは、僕なんかよりも強い国衛隊 隊員なのだ。


恥ずべきは、恐れるべきは、自分のプライドを優先して……戦闘中にエレナの足を引っ張る事だ。


だから、数分間、横になり回復に努めている。




「――ありがとう。もう大丈夫だ」


起き上がりながら そう言ったセイイチは、さらに言葉を続けようとしたが、やめておいた。


エレナが気を遣ってくれる、フォローしてくれる、それが目に見えていたからだ。


”僕は弱い。すまない”


その言葉を、心の底に仕舞い込んだ。


――そして、気を遣う必要がない、フォローする手間が無い言葉を口にした。


「強くなるよ。必ず」


決意を新たにしたセイイチは、エレナと共に――再び歩き出した。



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