黄昏のなかで

橫原倫絵

そこにいたのは

電車から降りて俺は久しぶりの地元に

懐かしさと暖かさを感じていた


「久しぶりだな」

都会に出てこの町を離れてから

長い間・・・・

帰ってきていなかった


「行くか・・・・」

そうして俺は・・・・

もう誰も済んでいない家に向かう

長い間・・・・

放置していた家に帰ってきた


逃げるように去る前に

いつも学校からの帰り道

自転車で通っていた・・・・

見慣れた田舎町のあぜ道がそこにはある


「多少道路は整備されても

何も変わらないなぁ・・・・」

そう言って俺は・・・・

自宅へと帰って来る

懐かしい鍵を取り出した


古びた鍵・・・・

そこについてる昔・・・・

両親にねだって買った・・・・

ヒーローキャラのキーホルダー

胸にもやもやが溢れながら

俺は玄関に鍵を刺して

玄関を開けた・・・・


「・・・・ただいま」

くだらない呼びかけ・・・・

誰もいないのに俺は声をかけた

帰って来るかもしれないなんて

あり得ない希望に縋った自分に

呆れた笑いを浮かべながら俺は自宅に入る


何も変わっていない

あの時の荒らされたままの自宅を見て

俺は唇を噛んで入った


「ほんと・・・・

なんで母さん達は・・・・」

そう呟きながら首を横に振る


「今更考えたって仕方ない」

そう呟いて俺は必要な書類を探し始める

そして見つけて俺は苦笑いを浮かべた


「あった・・・・

この家の書類・・・・」

そう言って俺は書類を確認する

この場所はずっと・・・・

売ってしまおうと思っていた

だけど・・・・

いわくつきがついてしまったこの家を

誰も買い取ろうとはしなかった


そこで俺はこの家を壊して

さっさと売地にすればいいと考えた

費用は掛かるから金を貯めるために

時間はかかったが

あとはこの家の書類だけ持っていけば

解体はすぐに可能だった


「これで・・・・

過去を清算できる」

もう俺はこの地元に二度と戻らない

そう思って資料を片手に家を出ようとする

すると・・・・


「ふ~ん・・・・

君は随分とつまらない人間になったね

けーすけ」

すると・・・・

目の前にとんでもない奴が現れた


「・・・・ちーちゃん?」

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