第40話 破壊された教室と思想の戦場
闇市場を破壊し、負傷者たちに医療品を届けた陽菜は、次の目標を教育の再建に定めた。ナブア紛争地帯の貧困と教育格差こそが、若者たちを武装勢力へと駆り立てる根本原因だと知っていたからだ。
陽菜は、ラシード、ムスタファ医師と協力し、破壊された村の学校の瓦礫の前に立った。
「私たちは、ただの物資支援で終わらせない。彼らが未来への夢を描けるように、ここに**『希望の教室』**を創る」
陽菜は決意を新たにした。
ムスタファ医師は、陽菜の人を思う前向きな心に共感し、治療の合間に子どもたちに衛生教育や基礎的な読み書きを教え始めていた。ラシードは、**「地平線モデル」**を応用し、地元住民が教師として立ち上がるためのネットワーク作りを始めた。
しかし、陽菜の教育支援は、闇の勢力にとって、これまでの医療品輸送や資金凍結よりも遥かに大きな脅威となった。武装勢力は、子どもたちの心を支配し、彼らを新たな兵士とすることで組織を維持していたからだ。教育は、彼らにとって**「思想戦の場」**だった。
武装勢力の残党は、陽菜の動きを察知し、**「陽菜が教えるのは異教徒の思想であり、子どもたちを腐敗させる」**というプロパガンダを流し始めた。彼らは、再建中の学校に夜間侵入し、準備していた教科書や学習用具を焼却するなどの妨害行為を繰り返した。
東城隼人は、この情報戦に対処するため、陽菜に連絡した。
「星野顧問、彼らは単なる暴力ではなく、デジタルプロパガンダを使っています。地元の若者を使い、陽菜さんの支援活動は『侵略的な文化』であると、SNSを通じて広めています。この思想戦に勝たなければ、学校を建てても子どもたちは来てくれない」
陽菜は、この新たな課題に対し、単なる反論ではない、より深い**「倫理的な対話」が必要だと悟った。彼女の「叫び」**は、今、文化と信仰という、最もデリケートな境界線に立たされていた。
陽菜は、ラシードと相談し、ある大胆な計画を立てた。
「ラシード、私たちは、彼らの信仰や文化を尊重する。私たちが教えるのは、**『平和に生き、互いを助け合う倫理』と、『自分の未来を自分で決めるための知恵』**だけだわ。そして、その知恵を教えるのは、私ではない。地元の、最も尊敬される長老たちよ」
陽菜は、支援物資と引き換えに、武装勢力のプロパガンダに影響されない、地元の長老たちや知識層を説得し、**「コミュニティ主導の教育」**を立ち上げるための協力を求めた。
この計画は、闇の勢力のプロパガンダを打ち砕くための、**「希望と知恵の連鎖」**だった。しかし、その長老たちの説得の場に、武装勢力のリーダーが乗り込んでくるという情報が、ラシードからもたらされた。
「ホシノ、奴は教育の場を、公開処刑の場に変えようとしている。危険すぎる!」
ラシードは警告した。
陽菜は、武装勢力のリーダーと、教育の正義を巡る、最後の対決に挑むことを決意した。
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