第35話 最後の叫び そして次の地平線へ
陽菜は、国際報道センターで、両親の死の真実と、それが世界の不正義と繋がっていたことを公表した。彼女の倫理と透明性を貫く行動は、闇の勢力の最後の攻撃を完全に無効化した。彼女の告白は、単なる勝利ではなく、「過ちを犯した者でも、光のために行動できる」という、世界への強い感動と共感を生み出した。
国際社会は、陽菜の**「新枠組み」**を全面的に支持し、採択は揺るぎないものとなった。
数ヶ月後。
陽陽は、フリーの「世界倫理監査官」として、国連と連携しながら世界中を飛び回っていた。東城隼人は、主任補佐として彼女を支え、**「光の連鎖」**を広げるための情報戦略を担っていた。
陽菜が主導した新しい支援の枠組みは、着実に効果を発揮し始めていた。「グローバル・ハート」は再生し、他の大手国際支援団体も、陽菜の提言した透明性の基準を取り入れ始めた。
遠い被災地では、ラシードとムスタファ医師が、「地平線モデル」を成功例として拡大させていた。食料、医療、教育の連鎖は、地域の希望となり、子どもたちは目を輝かせながら未来の夢を語り合っていた。
陽菜は、束の間の休息を得ていた時、ラシードから衛星通信が入った。
「ホシノ、お前のおかげで、私たちの地平線は光に満ちている。だが、お前の戦いはまだ終わらないと知っている」
「ええ、ラシード。闇は一つの場所を失っても、必ず別の場所で、別の形で生まれる。私の叫びに終わりはないわ」
ラシードは、通信越しに、一つの衝撃的な情報を伝えた。
「最近、私たちの地域の新たな鉱物資源の採掘権を巡って、複数の国際的な企業が暗躍し始めている。彼らは、採掘権を得るために、地元の政府高官に賄賂を送り、私たちのコミュニティを分断しようとしている。もし成功すれば、私たちの希望の連鎖は、再び貧困と紛争の連鎖へと逆戻りするだろう」
それは、陽菜が打ち砕いたはずの**「合法的な顔をした闇」が、今度は「開発」**という新しい仮面をかぶり、再び子どもたちの未来を脅かし始めたことを意味していた。
陽菜の戦いは、単なる「人道支援の倫理」から、**「持続可能な開発と環境倫理」**という、さらに広範で困難なテーマへと移行したのだ。
陽菜は静かに立ち上がり、東城に告げた。
「東城さん、次の会議はニューヨークではなく、ラシードのいる地域の政府と国際開発銀行の本部よ。私たちの行動する勇気は、今、**『環境と開発』**という新たな地平線で試される」
彼女の**「叫び」**は、決して途切れることなく、次の時代の不正義と戦うために、再び世界へと響き渡る。
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