潜航−海洋特殊作戦局−

レレ氏

第1話

xxxx年9月19日ーー

この日は人類は宇宙への進出を諦めた悲劇の日。

そして俺の夢も潰えた忌々しい日でもある。

確かその日は異常気象により残暑が厳しく、30度超えの暑い日


『次のニュースです、政府は宇宙事業を完全廃止とすることを決定致しました』


普段なら見向きもしないニュースに、俺は食いついていた。

ニュースが終わり、テレビをつけたままソファに座り込む。

気づいたときには手に握ったリモコンは壁にめり込み、頭の中は真っ白になっていた。


夢が叶いそうなところまで来たはずだった。

それがアッサリと簡単に砕け散った。

それからしばらくして、政府は宇宙事業への資金提供打ち切りだけでは無く、宇宙事業の禁止を打ち出した。

国を出て、海外へ行こうかとも思った。

でも、他の国も宇宙事業を禁止していた。

理由としては、宇宙開発中に起きた度重なる事故と宇宙開発に必要な資源の枯渇と地球環境の保護らしい。

それを知った俺はしばらく抜け殻と化していた。

宇宙開発事業部をリストラされ無職になったのも理由としてはあるが…一番は宇宙に上がれなくなったのがショックだった。

宇宙に上がるためにと、重力加速器の訓練。

呼吸が出来ず酸素を奪われる恐怖。

それらの辛い訓練にも耐えたというのに上がれなくなった、その事実に耐えきれなかった。


絶望に打ちひしがれて日々を自堕落に過ごしていたある日

自宅にある人物が訪ねてきた

「いつまでガキみたいに拗ねてるつもり?」

元同僚の五十嵐だった

男勝りで訓練も軽々こなしていたパーフェクトウーマン

「うるせぇ、ほっとけ」

このクソ暑い日に、一体何をしにきたのかと思った

「なんか用があってきたんだろ?」

「そりゃぁね、用もなきゃこんなところこない」

相変わらず可愛げがない

「これ、一緒にやってみない?」

五十嵐が差し出して来たのは1枚の紙切れ

「海底探査プロジェクト…?」

紙切れには

『海底のロマン一緒に集めてみませんか?20代〜30代の体力に自信のある若者募集中!』

と、良く分からないキャラクターと共に書かれていた

「なんだこれ?変な民間企業の求人か?」

俺は紙切れに妙な胡散臭さを感じた

「違う違う、国営、公務員だよ公務員」

五十嵐は変にニヤニヤしながら言った

「本当かよ?大体、海底探査プロジェクトなんて聞いた事もないぞ」

ニュースでも新聞でも、それこそネットですら聞いたことがなかった

「そりゃそうよ、極秘プロジェクトだから」

なぜ政府の極秘プロジェクトをこいつがしているのか?

理由は簡単だ、親父が政府高官だからだ

「ふーん…で、この極秘プロジェクトに参加しろと?」

「そういうこと、宇宙の代わりに海底のロマン探そうってわけ」

「…ごめんだね」

俺は玄関の扉を閉めようとした

「理由は?」

足を挟まれ、アッサリと阻止された。

あとついでに俺の足も踏んでいる、痛い

「めんどくさい、海底に興味は無い」

宇宙なら二つ返事でどこへだって行くつもりだ

「海底も宇宙も大して変わらんのでは?訓練も似たようなもんだし」

五十嵐はあっけらかんと言ってのける

「似てないだろ、宇宙に水中みたいな抵抗は無い」

「あー…確かに。でも宇宙にはいけなくなったんだからさ、いつまでもウジウジ言っててもしょうがないじゃん?それに生活費だってカツカツでしょ?」

嫌な事をズケズケと言う

だが、その通りではある

「そりゃまぁ…」

宇宙開発事業の時の貯金も尽きかけなのは事実だった

「なら良いじゃん、はい決定〜」

五十嵐がなぜか手を差し出してきた

手を差し出してきた理由が分からない俺は手を見つめるだけだったが

「ほら、握手。いや~、嬉しいよ」

無理やりに手を取られた

久しぶりの柔らかい手に少しドキッとした

「いや、なんで握手?」

「そりゃ、私が極秘プロジェクトの中核であんたの直属の上司だからね」

五十嵐はどこか誇らしげにしている。

もしかして親父のコネ?

とは口が裂けても聞けなかった

過去に七光りを指摘した奴がメッタメタに詰められているのが思い出される

「あぁそう…まぁ仕方ない、やるよ…」

こうして半分嫌々ながら海底探査プロジェクトへの参加へとなった。

ーーこれが地獄への舗装路だとはまだ知る由もなかった


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